2019年08月19日、私たちの働き方は大きな転換点を迎えています。政府や東京都は、ICT(情報通信技術)を駆使して場所を選ばずに働く「テレワーク」の普及を目指し、2019年07月22日から2019年09月06日までの期間で「テレワーク・デイズ2019」を展開している最中です。このICTとは、単なる情報技術に通信の重要性を加えた言葉で、ネットワークを通じて人と人がつながる技術を指します。
この取り組みの背景には、2020年の夏に開催を控えた東京オリンピック・パラリンピックが存在します。大会期間中は海外から大勢の観客が詰めかけ、首都圏の交通網が激しく混雑することが避けられません。そこで、事前に通勤を必要としない働き方を浸透させることで、交通混乱を未然に防ごうという狙いがあるのです。SNS上でも「満員電車から解放されるのは嬉しい」といった期待の声が続々と上がっています。
大手企業もこの動きに積極的に呼応しています。例えば三井住友海上では、本社に勤務する約5500人の社員に対し、期間中に一度はテレワークを実践するよう推奨しました。人事部の荒木裕也課長は、2019年07月24日に夏休みを兼ねて徳島支社を訪れ、パソコン一つで企画業務をこなしたそうです。翌日には有給休暇を利用して観光も満喫しており、まさに仕事と余暇を両立させる理想的な姿といえるでしょう。
テレワーク・デイズは今年で3回目を迎え、参加団体数は2017年の約950から、2019年08月15日時点では2700へと急増しています。活動の輪は東京に留まらず、今や全国47都道府県すべてに広がりました。大阪ガスのように、混雑対策という目的を超えて、社員の柔軟な働き方を促進するチャンスと捉える企業も増えており、テレワークが一時的なブームではなく、社会のインフラとして定着しつつあることが伺えます。
多様な人材を活かす鍵と、次世代通信「5G」がもたらす革新
テレワークの本質的な価値は、単なる混雑緩和ではありません。育児や介護といった家庭の事情を抱える人々にとって、在宅勤務という選択肢は仕事を継続するための強力な武器になります。2012年のロンドン五輪時にも、英国企業がテレワークの利点に気づき、生産性の向上や優秀な人材の確保に成功しました。日本でも同様に、多様な人材が輝ける土壌を整えることが、これからの企業経営において不可欠な視点となるはずです。
さらに2020年からは、次世代通信規格である「5G」の商用サービスが開始される予定です。5Gは現行の通信よりも圧倒的に高速で、遅延が少ないという特性を持っています。これにより、大容量のデータを瞬時にやり取りできるようになり、オフィス外で対応可能な業務の幅は飛躍的に広がるでしょう。テクノロジーの進化が、私たちの「働く場所」という制約を完全に取り払う日は、すぐそこまで来ているのかもしれません。
休息を脅かすリスク?今こそ考えたい「つながらない権利」の重要性
しかし、利便性の裏側には無視できないリスクも潜んでいます。いつでもどこでも働ける環境は、裏を返せば「いつでも捕まってしまう」状況を生み出しかねません。休日に上司からメールが届いたり、深夜に業務の問い合わせが舞い込んだりすることに、不安を感じる読者の方も多いのではないでしょうか。実際にネット上では、「テレワークになってから、仕事とプライベートの区別がつかなくなった」という切実な悩みも散見されます。
青山学院大学の細川良教授によれば、フランスでは2017年から、労働者が勤務時間外に連絡を拒否できる「つながらない権利」が法制化されました。ICTの発展が、本来明確であるべき労働時間と休息の境界線を曖昧にしてしまったからです。せっかくの便利な道具も、使い手に過度な負担を強いるようでは本末転倒でしょう。編集部としては、技術の導入と同時に、心の健康を守るための明確なルール作りが急務であると考えます。
テレワークが真に豊かな働き方として根付くためには、制度や技術だけでなく、私たちの意識改革も必要です。「休んでいる人には連絡しない」という当たり前のマナーを、デジタル時代に合わせて再構築していかなければなりません。2019年の夏を、単なる五輪準備期間で終わらせるのではなく、日本人が自分らしい生活を取り戻すための第一歩にしたいものです。今後、皆さんの職場ではどのようなルール作りを進めていかれる予定でしょうか。
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