化学製品の分離・精製(ぶんり・せいせい)を手掛けるフクデ化学工業(静岡県磐田市)が、このたび精製処理能力を10%から15%向上させる大型投資に踏み切ります。具体的には、本社にある第6工場へ新たな蒸留装置を追加導入し、需要が拡大している電気製品向けの電材関連、さらには製薬、日用品といった多岐にわたる化成品分野の国内生産増加に対応し、売上高のさらなる拡大を目指すというのです。
フクデ化学工業が持つ核となる技術は、物質それぞれの沸点の差を利用して、さまざまな化成品(かせいひん:石油や天然ガスなどを原料として製造される化学製品の総称)から不純物を取り除く「蒸留」による分離・精製技術でございます。この技術をさらに高度化するため、一度に7,000リットルもの原料を精製可能で、幅広い種類の化成品に対応できる新しい蒸留設備を追加導入する計画です。この設備は、常温で固体である物質や、沸点(ふってん:液体が気体に変化する温度)が非常に近い物質の分離など、難度の高い精製にも対応できるように設計されているのが特長でしょう。
この新規設備は2019年10月の稼働を予定しており、付帯設備を含めた投資額は2億円弱を見込んでいます。近年、製品の品質安定性を追求する顧客の動向として、「原料となる化成品にも純度の安定が求められている」と、若松博喜代表取締役は指摘されています。品質向上を背景に、精製を依頼する取引先を中国や東南アジアなどから日本の業者に切り替えるケースが増えており、フクデ化学工業への受注も好調に推移しているとのことです。
また、昨今の安全性や環境への配慮による規制強化で、使用できない物質が増加していることも、フクデ化学の事業を後押ししています。「量産に向けた新規の生産テストの要望や、既存取引先からの増産依頼が増えている」(若松氏)とのことで、今回の精製能力の拡大は、こうした高まる受注増に対応するための重要な一手となるに違いありません。この設備投資は、日本国内のものづくりを支える上で、非常に意義深い決断だと考えられます。
フクデ化学工業の顧客層は非常に幅広く、例えば医薬品や日用品メーカーにはシャンプーや洗剤の主成分を、輸送機器や電材関連メーカーには、タイヤのゴムの劣化を防ぐ添加剤、塗装の補助液、蓄電池の電解液(でんかいえき:電気を流す溶液で、電池の重要な構成要素)、さらには半導体製造で使われる洗浄液とその原料などを提供しています。これらの原料は、顧客の製品の売れ行きや改良・廃止によって受注量が大きく変動しがちです。だからこそ、多岐にわたる業種の顧客に対応することでリスクを分散し、事業の安定を図っているのです。
さらに同社は、PPM(ピーピーエム:100万分の1)やPPB(ピーピービー:10億分の1)という、超高精度の分離・精製技術を長年磨き上げてきました。精製設備の設計や施工も自社で対応できる体制を整えているため、顧客の依頼に合わせた専用設備を素早く構築できるのが大きな強みです。製品開発のサイクルが短期化している今、「開発依頼への対応スピードや安定した品質といった強みが活きる追い風になっている」(若松氏)と、その優位性を強調されています。
同社の業績は、2018年6月期の売上高が約14億円と、前期から5割近くも伸長しました。そして、2019年6月期の売上高は16億円前後を見込むなど、破竹の勢いで成長を続けています。今回の精製能力向上への投資は、この成長をさらに加速させる起爆剤となるでしょう。このニュースはSNSでも、「日本の製造業の底力を感じる」「こういうニッチトップ企業の技術力がすごい」といった、期待と称賛の声が多く寄せられており、注目度の高さがうかがえます。フクデ化学工業の未来の躍進に、今後も目が離せません。
コメント