世界的に「健康経営」という言葉が注目を集める中、タイヤやスポーツ用品でおなじみの住友ゴム工業が、非常にユニークで熱のこもった取り組みを加速させています。同社では、単に従業員の健康を願うだけでなく、具体的かつ実践的なプログラムを社内で展開しているのです。特に話題となっているのが、定期的に開催される社内ヨガ教室や、就業時間内に設定された健康に関する勉強会であり、多くの社員が自発的に汗を流しています。
2019年06月25日の夕刻、神戸市にある本社13階のホールは、静かな熱気に包まれました。午後17時30分の終業チャイムとともに集まった23名の従業員たちは、慣れないヨガマットの上で自身の体と向き合います。講師の掛け声に合わせて四肢を伸ばし、深く呼吸を整える時間は、日々のデスクワークや工場での緊張から解放される貴重なひとときとなっているようです。参加者からは、リフレッシュが翌日の活力になるといった喜びの声が上がっています。
SNS上でもこの取り組みは注目されており、「仕事終わりに社内でヨガができるなんて羨ましい」「同僚と一緒に運動すればモチベーションが続きそう」といったポジティブな反応が散見されます。2018年に試験導入されたこのプログラムは、予想を上回る反響により2019年から月1回の定期開催へと格上げされました。口コミを通じて参加者の輪が広がっており、運動不足を感じている若手からベテランまで、幅広い層がヨガの魅力に引き込まれているのです。
ここで注目すべきは、ヨガの講師を2014年にグループへ迎え入れた「ダンロップスポーツウェルネス」から招いている点でしょう。自社のリソースを最大限に活用し、専門性の高い指導を社員に提供できるのは、スポーツブランドを持つ企業ならではの強みと言えます。また、健康診断の結果を受けて運動が必要だと判断された社員に対しては、人事担当者が直接参加を促すなど、個人の主体性に任せるだけでなく、組織として背中を押す姿勢が鮮明です。
「自己責任」から「会社の責務」へ、意識の劇的な転換
住友ゴム工業の改革はヨガだけにとどまりません。2019年から新たにスタートした健康講義は、食事、睡眠、禁煙、さらには熱中症対策といった身近なテーマを扱っています。驚くべきは、これらのセミナーが「就業時間内」に開催されていることです。通常、業務時間は仕事に集中すべきものという固定観念がありますが、同社はその時間をあえて削り、社員の生活習慣を整えるための学びの場へと充てているのです。
こうした大胆な方針の背景には、経営陣の意識改革があります。人事を担当する小松俊彦執行役員は、かつては健康管理を「個人の自己責任」と捉えていたと振り返ります。しかし、ここ数年でその認識は、会社が取り組むべき最優先課題の一つへと変化しました。社員一人ひとりのバイタリティが向上し、心身ともに健やかであれば、結果として組織全体の生産性が高まるという「健康経営」の本質を見据えた戦略的な決断なのです。
ここで言う「健康経営」とは、従業員の健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することを指します。従業員の健康への投資は、将来的に企業の収益性を高めるという考え方です。住友ゴムの場合、30代から40代にかけて運動習慣が激減するというデータに基づき、仕事や家庭で多忙を極める世代にこそ、あえて職場で運動の機会を提供する必要があると考えました。汗を流す楽しさを再確認してもらうことが、同社の狙いなのです。
さらに、経営トップである山本悟社長自らが、運動によってウエストを絞った成果を社内集会で披露するなど、率先垂範の姿勢を示している点も見逃せません。社長自らが「健康であることの価値」を体現しているからこそ、社員の間にもポジティブな空気が醸成されているのでしょう。企業が社員の健康を本気で守ろうとする姿勢は、社員の愛社精神を高め、ひいては熾烈なグローバル競争を勝ち抜くための強固な土台となるに違いありません。
私は、このような企業の姿勢を心から支持します。これからの時代、社員を単なる「労働力」としてではなく、守るべき「資産」として捉える企業こそが、真の成長を遂げるのではないでしょうか。住友ゴム工業の試みは、働き方改革のその先にある「生き方改革」の道標となっているようです。皆さんも、まずは身近なストレッチから始めて、心身のメンテナンスを習慣化してみてはいかがでしょうか。
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