2019年6月11日、医療機器メーカー3社が、小売店によるコンタクトレンズの販売方法を不当に制限した独占禁止法違反の疑いで、公正取引委員会(公取委)による一斉立ち入り検査を受けました。検査の対象となったのは、日本アルコン、クーパービジョン・ジャパン、そしてシードの3社です。この件は、集客の要となる広告における商品の具体的な価格表示を小売店に控えさせるよう要求していたという、非常に重大な内容を含んでいるのです。
関係者からの情報によりますと、これら3社は遅くとも数年前から、チラシやインターネットの広告に、小売店に対して一部商品の具体的な価格を載せないよう強く求めていたとされています。その代わりに「特別価格」や「店頭価格から10%OFF」といった、曖昧な表現での表示を指示していた疑いが濃くなっているのです。さらに、一部の商品については、インターネットでの販売自体を制限していた疑惑も浮上しています。公取委は、要請に従わない小売店に対し、出荷停止や仕入れ価格のつり上げをほのめかしたかどうかも含め、広範な取引の実態を詳しく調査を進めていく方針です。
今回の問題の背景には、店頭販売よりも価格が安くなる傾向にあるネット販売によって、商品価格の「値崩れ」が起きるのを防ぎたいというメーカー側の思惑があったと見られています。しかし、公正取引委員会が動いた根拠となる独占禁止法とは、「私的独占」「不当な取引制限」「不公正な取引方法」といった、自由で公正な市場競争を妨げる行為を取り締まる法律です。今回のケースで焦点となっている「不公正な取引方法」は、市場での公平な競争を阻害する行為を指し、具体的には競争相手や消費者の利益を不当に損なう行為が該当します。メーカー3社間で共謀した形跡はないようですが、それぞれの判断で行っていたとしても、公正な競争を阻害したという疑いは拭えません。
この公取委による一斉調査のニュースは、SNSでも大きな反響を呼んでいます。特に「消費者が一番安く買える情報を隠していたのでは?」「結局、価格競争を避けて消費者に高い値段で買わせたかっただけでは?」といった、メーカーに対する厳しい意見が目立ちます。集客に不可欠な「価格」という情報を広告から制限することは、消費者が最適な選択をする機会を奪うことに繋がりかねません。透明性のある価格競争こそが、消費者に利益をもたらす健全な市場の姿でしょう。
専門家も、この問題の深刻さを指摘しています。元公取委事務総長の松山隆英・同志社大法科大学院教授は、「集客に欠かせない広告の表現に制約を課すのは『競争をするな』と言っているのに等しい行為」だと厳しくコメントされています。今回の公取委による3社への一斉調査は、この問題の深刻さを世間に広く訴える狙いも含まれているのではないか、との見解を示しておられます。私見ですが、コンタクトレンズは視力矯正という医療に関わる重要な商品であり、その販売方法が不当に制限されることは、消費者にとって大きな不利益を生み出す可能性があると考えます。
コンタクトレンズの国内市場は、2018年時点での出荷額ベースで2347億円と巨大な規模を誇ります。2016年時点の市場シェアでは、ジョンソン・エンド・ジョンソンが35%で首位、メニコンが19%、そして今回立ち入り検査を受けた日本アルコンが12%、クーパービジョン・ジャパンとシードがそれぞれ10%を占めていました。市場を牽引する主要メーカーが、消費者の利益に直結する価格競争を制限した疑いがあるとなれば、その影響は甚大です。公取委が押収した資料の分析や関係者への事情聴取を本格化させることで、独占禁止法違反の事実が明らかになるかどうかが注目されます。


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