2019年6月8日、福岡市で20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開幕いたしました。この会議では、世界経済は一時的に下方リスクを抱えつつも「年後半から来年にかけて回復する」という基本的な見通しが改めて確認されました。特に、アメリカの連邦準備理事会(FRB)による利上げ停止や、中国政府による大規模な減税策の効果が、新興国を含む世界経済を支える主要因として期待されているのです。しかし、この楽観的なシナリオの裏側には、世界最大の経済大国であるアメリカと中国の対立、いわゆる「米中対立」という極めて大きな不確実性が横たわっています。
実際、国際通貨基金(IMF)は、米中間での関税の応酬がさらに激化した場合、2020年の世界経済の成長率が最大で0.5ポイントも下押しされる可能性があると警鐘を鳴らしています。この「関税合戦」は、特定の国からの輸入品に対して課される税金、すなわち関税を報復的に引き上げ合う行為を指します。それにもかかわらず、IMFは4月にまとめた世界の成長率見通し、つまり2019年が3.3%、2020年が$3.6%$に加速するという予測を現時点では基本的に維持している状況です。
しかし、会議の場であるG20においても、米中両国は協調どころか「さや当て」を続けている状態です。「さや当て」とは、互いに張り合い、威嚇し合うような行動をとることを指します。協調して世界経済の課題に取り組むべき国際会議の場で、両国の対立が持ち込まれていることは、世界経済にとって極めて深刻な事態だと言えるでしょう。議長国である日本は、景気の下振れリスクに対応するために各国が協調すべきだと強く訴えていますが、報復関税の応酬を続ける米中の歩み寄りはいまだ見えていません。
この状況の象徴として、アメリカのトランプ政権の動向は極めて予測が困難です。ムニューシン米財務長官も福岡のG20関連シンポジウムに参加している最中に、トランプ大統領がメキシコへの関税発動の見送りをSNSツールであるTwitterに投稿するなど、政策決定のプロセスすらも見えにくいのが実情です。各国は世界経済の下振れリスクが増しているとの認識は共有しつつも、この不確実性の高まりの影響を正確に読み切ることができず、「年後半持ち直し」というシナリオをひとまず維持せざるを得ない面があるのです。
個人の見解としては、世界経済の安定は主要国、特に経済大国間の協調体制の上に成り立っているはずです。G20という国際協調の枠組みが、約10年前にリーマン・ショックという未曽有の経済危機に直面した際には「目の前の火消しに結束して取り組む」という明確な目的のもと、迅速に機能しました。しかし、現在、米中両国の高官や首脳から、世界経済の共通課題に真摯に取り組もうとする強い意欲は感じられません。国際的な協調が機能しない状況は、世界経済の成長だけでなく、グローバルな安定そのものを損なう重大な危機だと考えられます。
米中トップが示す埋まらない溝とSNSの反響
アメリカのムニューシン財務長官は2019年6月8日、「アメリカ経済に貿易問題による下振れの兆候は見られない」と強気の姿勢を崩していません。一方で、中国人民銀行の易綱総裁は、貿易摩擦がさらに激化したとしても中国の金融政策には「調整の余地が途方もなく大きい」と、打つべき手はまだ十分にあることを示唆しました。このように、両国のトップがそれぞれ自国の経済力や政策の柔軟性を強調し合う様子は、両者の間に横たわる深い溝を浮き彫りにしています。
さらに、トランプ大統領が中国からの全輸入品に対する「第4弾の制裁関税」の可能性に言及する一方で、中国の習近平国家主席は2019年6月7日に訪問先のロシアで「反グローバル化や覇権主義、強権政治の台頭に伴い、国際社会が直面する新たな課題や試練が日々増えている」と演説しました。これは、アメリカの「アメリカ・ファースト」的な政策や強引な外交姿勢を暗に批判したものと受け取られ、両者の隔たりは広がる一方でしょう。
この一連の報道に対するSNSでの反響を見ると、「結局、世界経済は米中の顔色をうかがうしかないのか」「G20のような会議でさえ、自国の利益を主張する場になってしまっている」「年後半回復なんて、関税がなくなってから言ってほしい」といった、先行きへの懸念や国際協調の現状に対する失望の声が多く見受けられます。世界経済の動向が米中両国の政治的判断に大きく左右されるという現状は、SNSユーザーの間でも広く認識され、不安を呼んでいることが伺えます。
米中対立に加えて、英国の欧州連合(EU)離脱問題(ブレグジット)や、イランとアメリカの間の緊張といった地政学的なリスクも世界中に拡散しています。こうした状況は、本来、世界経済の成長を支えるべき自由で安定した貿易体制を揺るがすものです。国際的な協調体制の立て直しと、米中間の建設的な対話が、世界経済の安定に向けた喫緊の課題だと言えるでしょう。
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