日本の製造業を牽引する日立製作所が、医療現場の要ともいえる画像診断機器事業を売却する方針を固めました。2019年08月23日現在、すでに売却先の選定作業に入っており、海外の有力な投資ファンドなどが熱烈な視線を送っています。その譲渡額は、なんと1000億円を突破する見込みだというから驚きですね。今回の決断は、同社が進める「選択と集中」という経営改革をさらに加速させる象徴的な出来事といえるでしょう。
日立は現在、収益性を重視したグループ再編を急ピッチで進めています。子会社である日立化成の売却手続きも並行して進んでおり、その狙いは極めて明確です。限られた経営資源をインフラ事業やIT分野へ一気に集中させ、激しさを増す世界市場での競争に打ち勝つための盤石な体制を整えようとしているのです。製造業の枠を超え、データや技術で社会を支える企業へと進化しようとする日立の覚悟が、今回のニュースからも強く伝わってきます。
SNS上では今回の発表に対し、「日立が医療から手を引くなんて意外だ」「インフラ特化への本気度を感じる」といった驚きの声が多く上がっています。中には「日本の優れた技術が海外ファンドに渡ってしまうのは寂しい」と、技術流出を懸念する意見も見受けられました。一方で、投資家層からは「低収益事業を切り離すスピード感が素晴らしい」と、東原敏昭社長が進める大胆な構造改革を支持するポジティブな反応が相次いでおり、注目度の高さが伺えます。
世界シェアの壁と「コモディティー化」への危機感
売却の対象となっている画像診断機器事業は、2016年に本体へ統合された旧日立メディコが中心となって手掛けてきました。具体的には、X線を使って体の断面を撮影する「CT(コンピューター断層撮影装置)」や、強力な磁石を利用して内部を映し出す「MRI(磁気共鳴画像装置)」、そして妊婦健診などでもお馴染みの「超音波診断装置」などが含まれます。これらは医療現場に欠かせない高度なシステムであり、人々の命を支える重要な技術です。
しかし、ビジネスの視点で見ると状況は非常にシビアです。世界の画像診断市場は、ドイツのシーメンス、アメリカのGE(ゼネラル・エレクトリック)、オランダのフィリップスという「世界3強」がそれぞれ約2割のシェアを握っています。さらに、旧東芝メディカルシステムズを買収したキヤノンがその後を追う展開です。日立は世界第7位という位置につけていますが、上位陣との差を埋めるには非常に高い壁が存在しているのが現状でしょう。
加えて、国内市場では医療機関への機器導入が一通り完了し、他社との激しい価格競争によって利益が出にくい状況に陥っています。さらに恐ろしいのは、中国企業の参入による「コモディティー化」の兆しです。コモディティー化とは、かつては高付加価値だった製品が、普及に伴って一般的な商品となり、価格の安さだけで選ばれるようになる現象を指します。技術的な優位性が失われれば、収益のさらなる悪化は避けられないという危機感があるのです。
営業利益率10%への挑戦!日立が描く次なる成長シナリオ
日立が掲げる野心的な目標は、2022年03月期までに売上高営業利益率を10%超に引き上げることです。これは、競合するシーメンスやスイスのABBといった世界のトップ企業と肩を並べるための必須条件といえます。対して、画像診断を含むヘルスケアユニットの2019年03月期の営業利益率は2.4%にとどまっていました。会社全体の収益性を底上げするためには、不採算に近い事業を見直し、より高い利益が見込める分野へ舵を切る必要があったわけです。
東原社長は、かつて約900社存在したグループ会社を数年間で500社程度まで絞り込む方針を掲げています。実際に2017年には日立国際電気、2018年にはクラリオンの売却を発表するなど、その言葉に嘘はありません。かつて22社もあった上場子会社は、今やわずか4社にまで減少しました。この徹底したスリム化こそが、日立が再び世界で輝くための戦略なのです。ただ切り捨てるだけでなく、未来への投資も忘れていない点が日立の強みといえます。
同社は2018年にABBの電力システム事業を7000億円超で買収することを決定し、2019年04月にはアメリカのロボットシステム開発会社の買収も発表しました。古い皮を脱ぎ捨て、新しい成長エンジンを手に入れようとする日立の姿は、まさにダイナミックの一言に尽きます。私は、この「聖域なき改革」こそが、日本企業がグローバル市場で生き残る唯一の道だと確信しています。伝統ある事業を手放す痛みは伴いますが、その先にはきっと、より強固な日立の姿があるはずです。
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