高級スキンケアブランド「SK-II」が、新しい買い物体験を提案する未来型の期間限定店を東京・原宿にオープンしました。米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)が展開するこの斬新な店舗では、人工知能(AI)やロボットが“接客”の主役となり、来店客が抱えがちだった「店員さんからの声かけのプレッシャー」や「勧められるままに不要な商品を買ってしまう不安」を解消することを目指しているのです。高額な製品だからこそ、自分のペースでじっくりと試したいという消費者のニーズに応え、ブランドへの敷居を下げて新規顧客を呼び込むことが狙いと言えるでしょう。
この革新的な期間限定店「SK-II フューチャーX スマートストア」は、2019年6月9日から8月12日までの期間、東京・原宿で開設されています。中でも注目を集めているのは、ロボットアームの「Yumi」による接客です。来店客が製品棚の前のパネルで肌の悩みなどを選択すると、Yumiが奥の棚から対象の商品をアームで掴んで差し出し、同時に商品の詳しい説明も行ってくれる仕組みになっています。これにより、人目を気にせず、気になる商品を手に取りやすくなっていますね。
さらに、肌の状態分析においてもAIが大きな役割を果たしています。来店客が鏡の前に座るだけで、鏡に映った画像からAIが肌の状態や肌年齢を瞬時に分析できるのです。これまでの肌分析では、光の当たり方を厳密にコントロールするための大掛かりなボックス型の装置や、美容部員が直接肌に当てる特殊な装置が必要でしたが、この新開発のAIは、鏡の前にいるだけで解析を可能にしました。分析結果は、目元、口元、ほほの3カ所それぞれについて、均質で良い部分や改善すべき部分として分かりやすく提示されます。結果に基づき、一人ひとりの肌の状態に最適なスキンケア商品が提案される仕組みです。
SNSでも「声をかけられずに試せるのは本当にありがたい」「高級化粧品店に行くハードルが下がる」といった共感の声や、「近未来の買い物みたいでワクワクする」といったポジティブな反響が寄せられています。高級な化粧品、例えばSK-IIの主力の化粧水は2万円前後と高額ですから、購入前に実際の店舗でしっかり手に取り、試してから決めたいと考えるのは当然でしょう。しかし、従来の店舗では、美容部員に話しかけられることによる「綺麗にしていかないと」という気遣いや、「余計な製品を買わされそう」という心理的な抵抗感があり、気軽に足を運びにくいという課題があったのです。
こうした課題を解消するため、この未来型店舗は、来店客がプレッシャーを感じることなく、いかに商品について深く知ることができるかを追求した結果だと言えます。気になる化粧品を試したい方向けには、目の動きを追跡するマジックミラーも設置されています。手で化粧品を試しながらも、視線だけで画面を動かして、化粧品の使い方や特徴などの情報を得ることが可能です。SK-II担当のチャン・ヨージン執行役員も「プレッシャーを感じさせず、いかに商品を知ってもらうかを考えた未来型店舗だ」と説明なさっています。
新しい時代の美容部員の役割とは
ただし、この店舗は完全に無人というわけではありません。美容部員も配置されていますが、その役割は「ビューティー・インフルエンサー」と名付けられ、従来の販売員とは一線を画しています。彼女たちの役割は、製品の説明や紹介といった“プッシュ型”の接客ではなく、来店客からのより詳しい質問に答えたり、自社製品だけでなく他社製品なども含めたトレンド情報などを話したりすることにあります。つまり、顧客のペースでの買い物を優先しつつ、専門的なサポートや、美容に関する広範な情報提供を行うアドバイザーとして機能するのでしょう。
これは、私が編集者として強く賛同できるポイントです。消費者がより賢く、そして主体的に商品を選びたいと願う現代において、このような「引き算の接客」は、購入の意思決定を尊重し、真の信頼関係を築く鍵になると考えています。AIやロボットによる客観的でプレッシャーのない情報提供と、経験豊富な「ビューティー・インフルエンサー」による人間的な深みのある対話という、それぞれの強みを融合させたこの取り組みは、高級化粧品という領域において、新たな顧客体験と販売のあり方を確立する試みと言えるでしょう。この実験的な店舗が、今後の小売業界にどのような影響を与えていくのか、引き続き注視していきたいと思います。
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