飲食業界に革新的な風を吹き込む新しいビジネスモデルが、いま注目を集めています。それは、実店舗を持たずにデリバリーのみに特化した、いわゆる**「ゴーストレストラン」という形態です。飲食店支援を手掛けるfavy(ファビー、東京・新宿)は、2019年6月10日から、このデリバリー専門店の営業を開始します。既存のレストランのキッチンにある、利用されていない空き時間を活用し、新たな収益源を生み出すこの試みは、大きな話題となるでしょう。
favyが展開するのは、肉や魚介、豆などを贅沢に組み合わせた主食にもなるサラダ「パワーサラダ」を提供する「SMART SALAD FACTORY(スマートサラダファクトリー)」、焼肉の「X-BEEF」、そして同社が以前から手掛けるカフェ「coffee mafia」の3つの業態です。どのメニューも1,500円から1,800円程度の価格帯で提供される見込みで、特にスマートサラダファクトリーでは、オンライン直営店「食べチョク」を通じて農家から直送された有機野菜を使用するなど、素材へのこだわりも見られます。例えば、健康や美容といったテーマに合わせた「スタイルアップデート」(1,660円)のようなメニューが用意される予定です。
この革新的なビジネスの調理拠点となるのは、東京都中央区にある「re:Dine(リダイン)GINZA」という飲食店です。この店舗は、昼はランチビュッフェ、夜は複数のシェフがキッチンを共有し、それぞれ独自の料理を提供するシェア型レストランとして営業しています。favyの3業態は、このリダインの「厨房の余剰スペース」を、主に昼の時間帯に「間借り」して調理を行います。調理された商品は、「Uber Eats(ウーバーイーツ)」や「出前館」といった宅配代行サービスを通じて、注文者のもとへ速やかに届けられるのです。
リダインの周辺は商業施設やオフィスが密集しているため、ランチタイムの混雑を避けたい方や、忙しくて外食する時間がないビジネスパーソンなどの昼食需要を取り込むことが期待されています。私見ですが、これはまさに「場所の最適化」であり、既存資産を無駄なく活用する「シェアリングエコノミー」の理想的な形と言えるでしょう。この仕組みは、初期投資や固定費を大幅に抑え、新たな飲食ビジネスへの参入ハードルを劇的に下げる可能性を秘めていると考えられます。
世界で加速する【ゴーストレストラン】の波と市場の動向
自前の店舗を持たずに、宅配代行サービスを介して料理を届ける「ゴーストレストラン」は、米国や中国などの国々で既に拡大しています。特に中国では、調理設備を提供する「シェアキッチン」事業者が急成長しており、例えば「熊猫星厨(パンダセレクテッド)」などが知られています。日本国内でも、貸しスペースの「軒先(のきさき)」が吉野家ホールディングスと協業し、飲食店の営業時間外の空きスペースを貸し出す「軒先レストラン」を展開するなど、同様の動きが見られます。
favyの米山健一郎取締役は、「他の飲食店でも厨房を間借りする仕組みを、積極的に横展開していきたい」と意欲を語っています。同社は、飲食店の定額課金(サブスクリプション)やシェアキッチンなど、新しいビジネスモデルの提案に力を入れてきた実績があります。このような動きは、飲食店の「遊休資産」**、すなわち使われていない時間や設備を有効活用し、店舗側の新たな収入源を生み出す点でも非常に優れていると言えるでしょう。
宅配代行サービスの普及は、このゴーストレストラン市場の追い風となっています。調査会社NPDジャパンのデータによれば、日本のデリバリー市場は前年比5.9%増の4,084億円に達しており、市場は着実に成長しています。米Uber Technologies(ウーバーテクノロジーズ)や夢の街創造委員会といった宅配代行事業者がサービス展開を加速していることも、市場活性化の一因でしょう。また、2019年10月に予定されている消費増税においても、飲食料品の宅配やテイクアウトは軽減税率の適用で税率が据え置かれる見通しのため、今後も市場の拡大が期待されます。SNSでも「初期費用ゼロで始められるのは画期的」「自宅にいながら有名店の味を楽しめる」といった好意的な反響が見られ、この新しいスタイルへの期待の高さが伺えるのではないでしょうか。
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