自動車業界の巨大なアライアンスである「日産・ルノー連合」に、緊張感が走っています。2019年6月25日に予定されている日産自動車の株主総会で諮られる経営改革案について、筆頭株主であるフランスのルノーが、議案への投票を棄権する意向を日産側に伝えていたことが明らかになりました。この事態は、元会長カルロス・ゴーン被告の逮捕以降、企業統治の改善を目指す日産の改革に、にわかに不透明感を強める結果となっています。アライアンスの行く末を案じる声が、すでにSNSなどでも多数見受けられます。
今回のルノーの動きは、日産が提案する「指名委員会等設置会社」への移行を柱とする定款変更の議案に対するものです。指名委員会等設置会社とは、取締役会の中に「指名」「監査」「報酬」の三つの委員会を設置し、これらの委員会が取締役や執行役の選解任、報酬などを決定する、**企業統治(コーポレート・ガバナンス)**の強化を目的とした組織形態のことを指します。これは、かつてゴーン元会長に権限が集中していた体制を見直し、経営の透明性を高めようとする日産の強い決意の表れでした。
しかし、ルノーのジャン・ドミニク・スナール会長が2019年6月7日までに日産の西川広人社長兼CEOに送付した書簡では、この改革案に対するルノー側の不満が明確に示されています。仏紙フィガロなどの報道によりますと、ルノーは、新たに設けられる指名・監査・報酬の三委員会において、ルノー出身で取締役に就任する予定のスナール氏とティエリー・ボロレCEOの二役員が、要職に就いていない点を問題視している模様です。この人事案では、ルノーの存在感が一段と低下してしまうという危機感を、強く抱いているのでしょう。
ルノーの不満の背景には、ゴーン元会長の逮捕以降、日産の経営陣がルノーの発言力を削ごうとしていることへの強い懸念があります。私見ですが、43%もの日産株を保有する筆頭株主として、そしてアライアンスのパートナーとして、ルノーが日産の重要な統治機構の要職に自社の役員を送り込みたいと考えるのは、当然の権利と主張したいのでしょう。自社の利益を守るための、非常に強い駆け引きに出たものと推測されます。
この定款変更の議案を成立させるためには、株主総会に出席した株主の議決権のうち、3分の2以上の賛成票が必要です。日産株の約43%を保有するルノーがもし本当に投票を棄権した場合、定足数を満たせず議案が不成立となる可能性が非常に高まります。このルノーの「棄権の意向」は、日産に対して強い圧力をかけるための、戦略的な姿勢だと見て取れるでしょう。
ルノーの強硬姿勢に対し、日産の西川社長は日本時間の2019年6月10日朝、報道陣からの問いかけに対し、「いま話すことはない」と発言しています。また、株主総会までにルノーの理解を得られるかという質問に対しても、「意見の違いがあれば話をしていく」と述べるにとどまっており、両社間の交渉が難航している様子がうかがえます。日産は、経営の独立性を守りつつも、大株主であるルノーとの関係修復という、極めて難しい舵取りを迫られている状況です。
SNS上では、「日産の経営改革がこのまま頓挫してしまうのではないか」「ゴーン問題の根本解決には程遠い」といった、先行きへの不安を示すコメントが目立っています。日産が目指すコーポレート・ガバナンスの強化は、自動車業界全体からも注目されている重要な取り組みです。今後の日産とルノーの交渉の行方は、アライアンスの安定性、ひいては両社の企業価値に大きな影響を与えることになるでしょう。
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