【2019年米国株】利下げ神話の終焉か?ダウ続落が示唆するFRBの苦悩と世界経済の減速リスク

株式市場に広がる楽観論に、冷や水が浴びせられたような展開となりました。2019年6月12日の米株式市場において、ダウ工業株30種平均は続落し、前日比43ドル安の2万6004ドルで取引を終えています。先週までは「利下げ期待」を燃料に相場が急上昇していましたが、ここに来てその勢いには明らかな息切れ感が見え隠れしています。むしろ、世界経済そのものが減速に向かうのであれば、金融政策によるカンフル剤だけでは株価を支えきれないという、根源的な不安が投資家の間で渦巻き始めているようです。

この不安を裏付けるように、同日朝に発表された経済指標も弱含みでした。2019年5月の米消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年同月比で1.8%となり、4月の2.0%から鈍化しています。ちなみにCPIとは、消費者が購入するモノやサービスの値動きを示す指標で、インフレ率を測る重要な物差しです。今回はエネルギーだけでなく、医薬品や衣類などの伸びも鈍く、市場予想の1.9%さえも下回る結果となりました。

さらに、物価連動債から算出される「今後10年の予想インフレ率」も右肩下がりを続けており、12日には1.70%台まで低下しました。これは、市場関係者の多くが「今後、物価の伸び悩みは長引くであろう」というシナリオを真剣に描き始めている証拠と言えるでしょう。米連邦準備理事会(FRB)は、激化する米中貿易摩擦への対応だけでなく、こうした物価の低迷という側面からも、利下げを迫られる厳しい構図の中に立たされています。

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市場の「利下げ織り込み」と現実の温度差

実際、2019年6月12日時点の米政策金利先物市場の動きを見ると、7月までに利下げが実施される確率を8割以上と予測しており、市場はすでに「金融緩和」を既定路線として織り込んでいます。しかし、それにもかかわらず株式市場の反応が鈍いのはなぜでしょうか。先週1週間でダウ平均は1168ドルも上昇しましたが、今週に入ってからは買いが続きません。

その背景には、昨年2018年10月に付けた史上最高値(2万6828ドル)が目前に迫っており、戻り待ちの売りに押されやすくなっているという需給面の要因があります。しかしそれ以上に、現在のFRBに残された「利下げ余地」の乏しさが強く意識されている点は見逃せません。現在の政策金利は2.25~2.50%ですが、過去の景気後退局面では5%程度の利下げで対応してきました。つまり、今のFRBには過去のような強力な武器が残されていないのです。

ネット上のSNSや投資家コミュニティでも、この状況に対する不安の声が散見されます。「利下げは嬉しいけど、それがリセッション(景気後退)の合図なら意味がない」「タピオカブームの裏で株価が天井を打つのではないか」「パウエル議長の発言次第では、梯子を外されるのが怖い」といった、楽観と警戒が入り混じったリアルな反響が飛び交っており、投資家心理の揺れ動きが手に取るように分かります。

迫りくる「景気後退」への備え

著名投資家のポール・チューダー・ジョーンズ氏も警鐘を鳴らしています。彼は12日の米CNBCのインタビューで、FRBが年内に利下げに踏み切るとの見方を示しつつも、もし米国が中国製品への関税をさらに拡大すれば「景気後退に陥る可能性は確実にある」と断言しました。もはや、利下げ観測という甘い期待だけに踊らされていると、大きな痛手を負うリスクがあることに、賢明な投資家たちは気づき始めています。

私自身の見解としても、現在の相場は非常に危ういバランスの上にあると感じます。金融政策はあくまでサポート役であり、実体経済の悪化を完全に食い止める魔法の杖ではありません。2001年のITバブル崩壊後や、2007年の住宅バブル崩壊後のように、利下げが始まった当初は株価が支えられても、結局は翌年にかけて大きく下落した歴史があります。私たちは「利下げ=株高」という短絡的な思考を捨て、ファンダメンタルズを直視すべき局面に立っているのではないでしょうか。

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