【J.FERRY倒産】10年超の「粉飾決算」が暴いたアパレル経営の闇!ネット通販の波に飲まれた人気ブランドの真相

2019年5月29日、東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請したアパレルブランド「J.FERRY」の運営会社、リファクトリィ(東京都中央区)の事態は、多くの関係者に大きな衝撃を与えています。銀座本店をはじめ、自由が丘や表参道、お台場のヴィーナスフォートなど、好立地にショップを展開し、30代から50代をターゲットにした高価格帯の『J.FERRY』や、よりリーズナブルな『003 J.FERRY』など3つのブランドを展開してきた同社の突然の倒産劇は、当初、ファストファッションの台頭や少子化、そしてネット通販市場の急速な拡大といった、現代のアパレル業界全体が直面する厳しい不況が主な原因だと見られていました。

しかし、事態はそれだけにとどまらなかったのです。同社社長が、なんと10年以上にわたる粉飾決算を行っていたことを自ら告白したため、その衝撃は業界全体へと波紋を広げています。リファクトリィは1992年7月に設立され、東京や千葉を中心に、北海道から福岡まで全国に合計30店舗を直営店やインショップ、または販売代行業者への一括委託といった3形態で展開していました。会社公表の売上高は、2002年6月期に約6億1700万円、2017年6月期には約43億5300万円と右肩上がりに成長しているように見え、経営は非常に順調だと周囲からは認識されていたことでしょう。

ところが、この「順調な拡大」の裏側には、隠された真実が存在していました。倒産に至る直接的なきっかけは、2019年5月末の金融機関への返済が困難になったことでした。5月中旬に弁護士に相談した後、5月27日に関係する金融機関やリース会社約30社に向けて説明会が開催されました。その場で社長から飛び出したのが、10年以上にわたり、会社の業績を実態よりも良く見せるための不正な会計処理、すなわち粉飾決算を行っていたという驚愕の告白です。

粉飾決算とは、企業が実際よりも利益や資産を過大に計上したり、負債を過少に計上したりすることで、財務状況を偽って表示する行為です。これにより、金融機関からの融資や投資家からの出資を不正に引き出すことが可能になってしまいます。リファクトリィは私的整理を目指す意向を示しましたが、「金融機関の数が多すぎる」との指摘を受け、自主再建を断念せざるを得ませんでした。その結果、わずか2日後の5月29日に民事再生法の適用を申請し、負債総額は2019年4月30日時点で、債権者265人に対し約60億1367万円にものぼります。このうち、借入金が負債全体の89%を占める約53億5613万円でした。

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粉飾が常態化した転換点:スマホ普及とネット通販の波

粉飾決算が始まったのは、およそ2007年ごろだと会社側は説明しています。当時、約15億円だった借入残高に対し、一部の金融機関から「これ以上の追加融資は難しい。借入金を15億円に抑えるように」との指摘を受けていたにもかかわらず、リファクトリィは新規店舗の開業準備を進めており、後戻りできない状況に陥っていました。このため、指摘を受けた金融機関以外からの借り入れを重ねるようになり、その実態を隠す目的で、2008年6月期の決算から粉飾に手を染めてしまったのです。具体的には、金融機関からの借り入れを売上として計上するなどの手口が用いられ、一度始まると、財務諸表の連続性や整合性を保つために不正が常態化してしまいました。

粉飾が始まった後の数年間は、実態の業績も比較的順調に推移していたため、粉飾された数値と実態の数値の間に大きなズレは生じていなかったとされています。しかし、その後の数年間で、両者の乖離は決定的に広がってしまいました。その最大の原因の一つは、スマートフォンの爆発的な普及です。総務省のデータを見ても、2011年から2016年までの5年間で20代の保有率は44.8%から94.2%へ、30代も28.9%から90.4%へと急伸しており、このデジタルシフトは社会現象となりました。

スマートフォンの普及は、アマゾンやZOZOTOWNに代表されるネット通販市場の急拡大を促しました。同業他社がこぞってネット通販での販路拡大に力を入れ、売上を伸ばしていく中で、リファクトリィは従来の「店舗数拡大による売上拡大」という方針を頑として変えませんでした。その結果、2016年6月期には、実質の売上高(約30億2700万円)が初めて前期を下回り、さらに2018年6月期の実際の年間売上高は約25億6300万円まで落ち込み、約7億4100万円もの最終赤字を計上し、経営は限界に達してしまったのです。

SNS上では、「あのJ.FERRYがまさか…」「粉飾が10年も続くなんて信じられない」「アパレル業界の厳しさを物語っている」といった驚きと懸念の声が広がっています。特に、知名度の高いブランドが長年にわたる不正を行っていたことに対する失望や、ネット通販への対応の遅れを指摘する意見が多く見受けられます。私の意見ですが、リーマン・ショックのような巨大な経済危機を乗り越えられたのは、一重に粉飾決算という不正行為によるものだった可能性が高く、その事実を無視して店舗拡大を進めたことが、最終的な破綻を招いたと言えるでしょう。経営の実態と向き合わず、成長神話にしがみついた結果、時代の流れを読み違えてしまったのです。

再建に向けた動きとステークホルダーへの警鐘

民事再生法の申請から5日後の2019年6月3日には、都内で債権者説明会が開催され、取引先約120人が集まりました。会社側は、スポンサー選定をM&A専門会社に依頼し、早急に外部から経営および資金の支援を受ける予定であることを説明し、7月中旬にはスポンサーに経営権を移転したいとの見通しを伝えました。現在、20〜30社の候補をリストアップし、すでに数社からは好感触を得ているとのことで、今後の進捗が注目されています。また、公式通販サイトでは現在、「本気のタイムセール 最大85%オフ」という大規模なセールが開催され、売れ行きは好調のようです。

今回のリファクトリィの事例に限らず、最近は業歴が長く、数十億円規模の売上を持ち、社名や商品に高い知名度がある企業による10年以上にわたる粉飾決算の発覚が相次いでいます。このような企業の知名度や売上の大きさは、ステークホルダー、例えば金融機関や取引先、さらには監査法人などに対して、「この企業には内部統制上の大きな問題はないだろう」という過信を生み出し、経営状況に対する疑いの目を持ちにくくさせてしまうという背景があるのかもしれません。私の見解では、企業の規模やブランド力だけに惑わされず、財務諸表の数字の裏にある実態を深く掘り下げて検証することの重要性を、今回の事例は強く訴えかけているのです。

帝国データバンク東京支社情報部副課長の阿部成伸氏も指摘するように、今回の事案は、今後の取引先実態調査の方法に一石を投じるものとなるでしょう。粉飾決算は、企業の信頼を根底から崩壊させる行為であり、ネット通販時代の競争激化に直面するすべてのアパレル企業、そしてその取引先や金融機関に対して、経営の透明性と実態把握の徹底を改めて迫る、極めて重要なケースだと言えるでしょう。

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