2019年6月15日から長野県で開幕するG20(20カ国・地域)の関係閣僚会合では、深刻化するプラスチックごみ(廃プラ)の削減に向けた国際的な協力体制の構築が最重要議題の一つとして議論される見込みです。これまで廃プラの主要な受け入れ先だった新興国で、環境汚染が深刻な問題となり、次々と輸入規制に踏み切っているため、先進国による国際協調の機運がかつてないほど高まっている状況です。しかし、国ごとのプラスチックへの依存度の違いから、実際に効果を発揮する具体的な合意形成ができるかどうかは、依然として不透明な要素を含んでいます。
廃プラ問題の深刻さを物語る出来事として、フィリピンのドゥテルテ大統領が2019年4月に、カナダから送られてきた廃プラを「全て送り返す。フィリピンはカナダのゴミ捨て場ではない」と強い言葉で非難したことが挙げられます。これらの廃プラは当初リサイクルを目的としていたものの、実際にはリサイクルが困難な様々なごみが混入していた実態がフィリピン当局の調査で明らかになったのです。同様にマレーシアも、日本や米国などから受け入れた廃プラの送還を検討しており、同国のヨー・ビーイン環境相は5月28日の記者会見で、「環境汚染によって空気や川が汚れている。先進国はプラスチックごみのあり方を見直すべきだ」と、強い警鐘を鳴らしました。
世界最大の廃プラ受け入れ国であった中国が、リサイクルがうまく機能せず海洋などに流出する問題から、2017年に輸入を禁止したことで、その廃プラが東南アジア諸国に集中する事態となりました。しかし、その実態は以前と変わらず、東南アジア各国でも環境汚染の深刻化を招き、各国で輸入規制の動きが加速しています。このような背景から、国際的な有害廃棄物の移動を規制する「バーゼル条約」の締約国会議が5月にスイスで開催され、汚染された廃プラを輸出する際には相手国の事前同意を義務付ける改正案に合意しました。ここでいうバーゼル条約とは、毒性のある金属や医療廃棄物などの有害なごみの国境を越える移動を規制するための国際的な枠組みを指しますが、汚染されていないリサイクル可能な廃プラは対象外でした。そのため、今回の改正だけでは、世界的な廃プラ問題の抜本的な解決には繋がりにくいとの見方もされています。
急ピッチで進む各国の規制と日米の厳しい立場
途上国からの強い反発を受け、先進国は慌ただしく対策を打ち出し始めています。カナダのトルドー首相は6月10日の記者会見で、早ければ2021年までに使い捨てプラスチックの使用を禁止する方針を表明しました。また、欧州議会も2019年3月に、より広範囲にわたる使い捨てプラスチックの使用を禁止する方針を決定するなど、規制への動きは加速しています。日本も、原田義昭環境相が6月3日の記者会見で、レジ袋の原則有料化を発表するなど、一歩前進の姿勢を見せています。
しかし、G20の場で実効性のある国際協調への合意を目指す上で、特に厳しい立場に立たされるのが、国民1人当たりの使い捨てプラスチック使用量が世界第1位の米国と、第2位の日本です。両国は、2018年のG7(主要7カ国)で廃プラの削減目標を盛り込んだ「海洋プラスチック憲章」への署名を見送っている経緯があるためです。日本は、廃プラを燃焼させて熱エネルギーとして回収する「サーマルリサイクル」という手法をこれまで採用しており、海外に比べてプラスチック排出を抑制する取り組みが出遅れている現状があります。
プラスチックは自動車の軽量化や食品の個包装など、現代社会において非常に大きな役割を果たしているため、利用を抑制する規制の導入には慎重な判断が求められます。そのため、日米は使い捨てプラスチックの全面禁止には及び腰であり、地球温暖化対策における「パリ協定」のような、各国に拘束力を持つ国際的な新たなルール作りを避けたい意向があるようです。この拘束力とは、国際法や条約が国に対して法的義務を課し、違反すれば制裁などの対象となり得る強制力を意味します。九州大学の磯辺篤彦教授が「廃プラ問題は国際協調が重要だ。共通の削減目標も考えていくべきだ」と指摘するように、拘束力のある枠組みを避ける姿勢が、世界の合意形成を阻害しかねないという懸念があります。
🌏編集者からの提言:持続可能な社会への責任ある一歩を
私たち編集部は、今回のG20関係閣僚会合は、国際社会が抱えるこの緊急課題に対して、日本がリーダーシップを発揮する絶好の機会だと考えています。これまで環境問題への取り組みで遅れが指摘されてきた日本ですが、だからこそ、ここで単なる「レジ袋有料化」といった表面的な対策に留まらず、プラスチックのライフサイクル全体を見据えた、野心的な廃プラ削減目標を打ち出すべきではないでしょうか。
プラスチックが持つ利便性は理解できますが、現在の深刻な海洋汚染を前にして、利便性だけを優先し続けることは、未来世代への無責任な態度の表明と言わざるを得ません。技術大国である日本には、新たな代替素材の開発や、高度なリサイクル技術を世界に提供するという、大きな責務があるはずです。G20では、自国の立場を守るための消極的な議論ではなく、地球全体の環境保全と持続可能な社会の実現を見据えた、大胆かつ実効性のある国際的な枠組みを主導することが、今、日本に強く求められていると言えるでしょう。国際協調の重要性を再認識し、G20全体がその構想力を試される正念場を迎えることになります。
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