🔥老後資産「2000万円」問題の衝撃!私的年金・NISA拡充に向けた議論はなぜ停滞したのか?【人生100年時代の資産形成を考える】

2019年6月に表面化した金融庁の報告書を巡る大騒動が、私たち一人ひとりの老後生活を支えるための重要な政策議論に、冷や水を浴びせる事態となっています。この報告書は、公的年金以外に約2,000万円の金融資産が必要になるとの試算を示し、国民の間に大きな衝撃と不安をもたらしました。その結果、政府が推進したいと考えていた個人による「自助努力」、すなわち私的な年金制度や投資による資産形成を後押しする動きが、今や立ち往生している状況なのです。

長寿化が進行する社会において、生涯にわたる資産形成をどう支えるかは、政府にとって避けて通れない重要な課題であります。そのため、政府は個人型確定拠出年金、通称iDeCo(イデコ)といった私的年金制度や、少額投資非課税制度、NISA(ニーサ)を活用した中長期的な投資を推奨してまいりました。iDeCoは、毎月一定額を積み立てて投資信託などで運用する仕組みで、掛け金が毎年の税負担を軽減し、運用益も非課税になるという大きな税制優遇が魅力です。しかし、公的年金加入者の中での加入率はわずか1%程度にとどまっているのが現状です。

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「自助」という言葉すら使いにくい状況へ

厚生労働省は、働く期間が長くなる現代に合わせてiDeCoの加入年齢の上限を60歳から65歳に引き上げることを検討するなど、制度の拡充を目指していました。また、税制優遇をさらに充実させるべきだという意見も、同省の諮問機関である社会保障審議会内で高まっていました。ところが、金融庁の試算を巡る国会での激しい議論の中では、こうした自助努力を促すことが、あたかも公的年金制度が機能不全に陥っていることの裏返しであるかのように捉えられてしまったのです。ある厚生労働省の幹部は「今は『自助』という言葉を使うことすら敬遠されている」と弱気な姿勢を見せており、2020年度の税制改正に向けて秋にまとめる予定であった改革案の作業にも、大きな遅れが生じています。

この騒動によって、当初の目的から離れてしまったと悔やんでいるのは、試算を示した張本人である金融庁も同様であります。金融庁は、現在時限措置とされているNISAの恒久化(期限を設けずに制度を存続させること)を財務省に強く要望しており、この2019年は「勝負の年」として臨むはずでした。しかし、同庁の幹部からは「報告書を土台に要望するはずが、その土台がなくなってしまった」という嘆きの声が聞かれます。金融庁側も、自助努力の必要性を強調したいがために、将来の不安をあおるような表現を使ってしまったと反省の意を示しており、「自助の必要性は本来、個人の状況によって大きく異なる。平均値で示してしまったのは間違いだった」と後悔の念をにじませています。

SNSでの反響と財務省の慎重な姿勢

この「老後2000万円」を巡る騒動は、SNS上でも大きな反響を呼びました。「年金だけでは生活できないのか」「政府は自助を押し付けている」といった不安や不満の声が広がり、政策への信頼にも影響を与えかねない状況となりました。こうした背景から、制度拡充の要望を受ける側の財務省も、まずは騒動の沈静化を待つという慎重な姿勢に転じています。財務省は、働き方によって利用できる資産形成の手段や、退職金への課税方法が異なっている現状を是正するための議論を始めていたものの、ある幹部は「結論を出すには2~3年はかかる」と、長期的な視野で臨む構えを見せています。

そもそも財務省内部には、公的年金の財政検証(制度の長期的な健全性を確認するための定期的な見直し)を行う年に、私的年金などの自助努力に関する議論を拙速に進めることへの慎重論も少なくありませんでした。その理由の一つとして、日本の納税者のうち、所得税率が最低の5%(課税対象の所得が195万円以下)の層が6割を占めている現状が挙げられます。別の財務省幹部は「自助努力は、ある程度“お金がある人”の話になりがちです。まずは積み立てるお金がない人の支援を優先すべきではないか」と指摘しており、支援の優先順位についても意見が分かれている様子です。

【編集者見解】支えなき「人生100年時代」を避けるために

私見として、急速に高齢化が進む日本において、公的年金制度の持続可能性を確保することと、個人による自助努力を支える仕組みを充実させることは、どちらも不可欠な両輪であると考えます。今回の騒動によって、一時的に自助努力を促す政策議論が停滞してしまいましたが、これは将来世代の大きなリスクとなりかねません。公的年金は生活の「土台」であり、iDeCoやNISAは、その土台の上に築く生活の「ゆとり」であります。この両方を同時に強化していくことが、「人生100年時代」という長期にわたる生活設計における国民の不安を解消し、より豊かな老後を送るための鍵となるでしょう。今回の教訓を生かし、政府は国民との対話を重ね、誤解を招かない表現と、所得層に応じたきめ細やかな支援策を打ち出していく必要があるでしょう。

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