👵投資は怖い?いや、応援だ!「人生100年時代」を切り拓く投資教育の今と未来:日経STOCKリーグ20年の歩みとつみたてNISA・iDeCoの波

株式市場は、私たち個人の資産形成の場であると同時に、企業に成長のための資金、すなわち成長マネーを供給する重要なパイプ役を担っています。「人生100年時代」の到来が現実味を帯びる中で、老後への備えとして自助努力による資産形成が不可欠となり、また日本経済全体の資本市場を活性化させるためにも、健全な投資文化の定着は急務と言えるでしょう。

こうした時代の要請に応える金融投資教育の場として、2000年にスタートした「日経STOCKリーグ」は、今年でめでたく「成人」、つまり第20回大会を迎えることになります。平成の「投資の冬の時代」を経て、令和という新しい時代において、これから市場を担う若い世代をどのように育んでいくのか。本稿では、その歩みと、現在の金融教育を取り巻く状況を深く掘り下げて考察していきます。

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老練投資家が語る株式投資の本質

つい今年の春、大手証券会社が開催したセミナーで、私は一人の80歳近い女性に出会いました。その方は株式投資歴が40年余りにもなるというベテラン投資家で、「乳幼児用品のピジョンでしょ、食品のカゴメでしょ。自分の好きな会社を応援してるのよ」と、実にエネルギッシュにお話しされていたのが印象的でした。彼女の投資スタイルは、「がんばってくれそうな会社の株を買い、あとはそのまま保有する」というシンプルなものです。この考え方こそが、応援したい企業にお金を投じ、その成長が長い目で見て株主にも実りをもたらすという、資本市場と投資の本来あるべき姿なのです。

しかし、残念ながら、多くの日本人の皆様にとって、投資は依然として縁遠い存在のままではないでしょうか。バブル崩壊からおよそ30年が経過し、「投資は怖い」「難しい」といったネガティブなイメージが深く根付いてしまっているのが現状です。長期間にわたるデフレ(物価が下がり続ける経済状況)の中で、資産の大半を預貯金として保持してきた人々は、目先の資産を減らさずに済んだため、一見すると賢く守りに徹したように見えるかもしれません。

ところが、先に述べた女性が目にしている風景は全く異なります。例えば、彼女が応援しているピジョンの株価は、1999年末と比較すると15倍にも跳ね上がり、カゴメも2倍以上に成長しているのです。これは、日本経済全体が停滞する中でも、事業を大きく発展させ、投資家の期待に応えてきた企業の勝利であり、応援の成果と言えるでしょう。企業の成長と個人の資産増加が循環するこの好ましい構造を、日本全体で回していくことが求められているのです。

こうした成功の循環を国全体で実現しているのが米国です。ダウ工業株30種平均は、この30年間で9倍にもなり、米国家計の金融資産は同時期に5倍にまで膨れ上がりました。これは、家計が持つ金融資産の3分の1を株式が占め、さらに投資信託や年金を通じた間接保有も多いことから、株価上昇の恩恵を広く享受しているためです。グーグルやアップルといったグローバル企業が世界中で収益を上げ、その恩恵が家計を潤すという理想的な構図ができあがっています。

一方、日本の家計の金融資産1800兆円のうち、半分が今なお現預金のまま留まっています。日経平均株価は、いまだにバブル期の高値を更新できず、家計の金融資産の伸びも30年間で2倍にとどまっているのが現状です。日本証券業協会が昨年行ったアンケート調査からも、「株式に興味がない」(59.5%)、「十分な知識をまだ持っていない」(26.0%)、「値下がりの危険がある」(23.5%)といった理由で、多くの人々が投資そのものに距離を置いていることが明らかになっています。

待ったなしの投資教育:つみたてNISAとiDeCoが示す未来

このままの状況で本当に良いのでしょうか。人生100年時代においては、公的な年金制度だけでは老後の生活が心もとないと考えるのが自然でしょう。日本証券業協会の鈴木茂晴会長が指摘するように、「自助の部分で資産形成を行い、老後に備える必要がある」のです。投資は、これからの時代、「他人事」ではなく、間違いなく「自分のこと」になっていくでしょう。

幸いにも、新しい潮流は見え始めています。それは、積み立て型の少額投資非課税制度、通称「つみたてNISA(ニーサ)」や、個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」といった、税制上の優遇措置がある仕組みを活用し、少額からでも積み立て投資を始める動きです。例えば、SBI証券では、投資信託による積み立て投資額が毎月120億円を超えていると聞きますし、つみたてNISAの日本全体の口座数も100万を突破し、その3分の2が20歳代から40歳代という若い世代によって占められているのが心強い傾向です。

投資は、最初は小さな一歩かもしれませんが、長く続けることで、その果実は大きく育ちます。こうした成功体験を積み重ねていくことこそが、「投資は怖い」という従来のイメージを根本から塗り替えていく力になるでしょう。そして、その流れを力強く後押しし、土台となるのが投資教育の大切な役割だと、私は強く確信しています。

企業の革新と国民株主の理想像

そして何より重要なのは、応援される側である日本企業自身が、経営をさらに磨き上げ、中長期的な視点で株価を高めていかねばならないということです。次世代を切り開くような元気で革新的な若い企業が、もっともっと登場することを期待します。企業の革新と個人の資産運用という両輪が、かみ合ってこそ、日本経済は力強く前進していくものです。

パナソニックの創業者である松下幸之助氏は、およそ50年前に、「新しい日本においては、人々はみな自分の仕事からの収入を得る一方で、株主となって配当を受けるというような状態がおそらく生まれてくるであろうし、また生み出さなければならないと思う」という言葉を書き残しました。これは、国民が広く株主となり、企業とともに豊かになっていく未来図を描いたものです。松下氏は、良き株主が存在してこそ、会社も真剣に経営に取り組むようになると考えたのでしょう。しかし、残念ながら、2019年6月14日現在の状況は、その理想からはまだ遠いと言わざるを得ません。

平成の30年間は、まさに投資にとって冬の時代でした。しかし、つみたてNISAやiDeCoなどをきっかけに、投資に徐々に踏み出し始めた今の世代が、数十年後に確実に報われる流れを、私たち全員で作り上げなければなりません。冒頭の女性のように、「あの会社を応援してよかった」と心から思える人々が決して珍しくない世代を築くことができれば、日本経済の風景は大きく、そしてポジティブに変わってくることでしょう。日本証券業協会も、学生や社会人向けの証券教育セミナーを拡充するなど、金融投資教育への取り組みを強化しています。

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