自動車産業は今、「100年に一度の変革期」という未曾有の大波に直面しています。この激しい変化の中心にあるのが、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)といった電動車への移行、そして自動運転やコネクティッドカーの普及を指すCASE(コネクティッド、自動化、シェアリング、電動化)と呼ばれる新潮流でしょう。世界的な環境意識の高まりや技術革新を背景に、自動車メーカーは生き残りをかけた競争を繰り広げています。
そんな中、自動車業界の盟主であるトヨタ自動車は2019年6月13日、愛知県豊田市の本社で開かれた株主総会において、来るべきモビリティ社会を力強く牽引していく決意を表明しました。豊田章男社長は、株主の方々と共に未来を切り開いていきたいとの意気込みを語られ、総会は午前10時に開始され、1時間49分後の午前11時49分に閉会しています。この日の総会には、過去最高の5,546人もの株主が参加され、同社の事業に対する関心の高さが伺えました。
この総会で最も注目を集めたのは、やはり電動車と安全技術に関する同社の取り組みです。2019年3月期には日本企業として初めて連結売上高が30兆円を超えるという驚異的な実績を達成しながらも、電動車やCASEへの巨額な研究開発投資によって競争環境は厳しさを増している現状があるからです。株主からも「インフラ整備と合わせたEV開発の進捗」など、将来を見据えた鋭い質問が飛び交いました。
これに対し、電動車担当の寺師茂樹副社長は、EV、HV、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)を含めたフルラインアップで電動車の普及に邁進していくと力強く回答されました。これは、特定の車種に偏るのではなく、あらゆるニーズに対応できる体制を構築し、着実に電動化を進めるというトヨタらしい全方位戦略の宣言と言えるでしょう。2019年6月7日には、2025年にも電動車の世界販売台数を550万台超、これは当時の世界販売台数の半分にあたるという目標を明らかにしています。2018年の電動車販売台数である約163万台から計算すると、わずか数年で販売台数を3倍以上にするという、非常に野心的な計画です。
この電動化の大規模なシフトを実現するためには、その「心臓部」とも言える車載電池の安定的な確保と技術開発が不可欠です。トヨタは将来の需給逼迫に備え、電池メーカーとの協業を積極的に拡大しています。具体的には、世界的な電池メーカーである中国の寧徳時代新能源科技(CATL)や、同じく中国の比亜迪(BYD)、そして日本の東芝などとの提携を進める計画を明らかにしています。さらに、パナソニックとは2020年末までに車載電池の新会社を設立する計画であり、強固な「電池連合」の構築に力を注いでいる状況です。私の見解では、電動車の競争力の源泉は電池技術と供給体制にあるため、この多角的な電池戦略は、トヨタが電動車時代を制するための非常に賢明な一手に違いありません。
また、EV開発の効率化とスピードアップを図るため、トヨタはパートナーシップも拡大しています。2017年にマツダとデンソーと設立したEVの基盤技術開発会社「EVシー・エー・スピリット」には、これまでにスズキ、SUBARU(スバル)、いすゞ自動車などが加わり、参加社数は9社にまで増加しています。これは、軽自動車から小型トラックまで、幅広い車種を効率よくEV化するための共通基盤を開発し、多様なニーズに応える生産体制を構築するという狙いがあると言えるでしょう。
具体的なEVの投入計画としては、世界に先駆けて中国で2020年にSUVモデルの「C-HR」と「イゾア」のEVを発売し、その後、日本国内でも2020年以降に近距離移動を想定した超小型EVなど、計4種類のEVを市場に投入する予定です。さらにスバルとは、SUVモデルのEVを共同開発し、2020年代前半に両社のブランドで販売する計画も進行しており、EVでも協調路線を加速させています。
一方、トヨタの代名詞とも言えるHV技術についても、技術のオープン化戦略を加速しています。HV関連の特許約2万4,000件を無償で提供(開放)することで、世界の自動車メーカーやサプライヤーがトヨタの優れたHV技術を活用できるようにし、電動化の普及に貢献していくという戦略です。これは、単なる自社の利益追求にとどまらず、自動車業界全体の電動化をリードするという、リーディングカンパニーとしての強い責任感の表れだと私は感じます。
株主総会では、高齢者による交通事故が社会的な関心を集めていることを背景に、自動車の安全性に関する質問も多く寄せられました。これに対し、トヨタは衝突回避支援システム「トヨタセーフティセンス」の搭載車種を増やしているほか、アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故を防ぐための後付けの加速抑制システムの対象車種も拡大するなど、安全技術の普及に注力しています。人工知能(AI)開発子会社である**トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)**のギル・プラット最高経営責任者(CEO)は、交通事故の件数や被害者を減らすことはもちろん、高齢者の方々も安心して運転できるような技術開発を進めていくと述べられました。
この一連の報道に対し、SNS上でも大きな反響が巻き起こっています。特に、電動車販売を「2025年に550万台超」とする目標には、「さすがトヨタ、本気度が違う」「電池の協業拡大は未来を見据えた英断」といった期待の声が多く見られました。また、HV特許の無償開放についても「HV技術を世界に広める姿勢は素晴らしい」「他社の電動化を後押しすることで、サプライヤーも含めたエコシステム全体が活性化するだろう」と、そのオープン戦略を評価する意見が目立っています。総会当日、本社前に展示された最高級セダン「センチュリー」の白の実車や、株主へのお土産として配られたそのミニチュアカーも話題となり、トヨタらしい細部にわたる「おもてなし」も印象的でした。
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