2019年6月14日現在、政府は国内の大学や国立研究開発法人が外国企業と共同研究を進める際の新たな指針、すなわちガイドラインの検討に苦慮しています。この動きの背景には、国際的な産学連携を強化し、日本の研究開発力を高めたいという狙いがあります。しかし、世界的な先端技術をめぐる米中間の激しい対立が影を落とし、意図せず技術が海外へ流出してしまうのを阻止するという、非常に重要な課題が浮上しているのです。まさに、国際的な競争力を高めるための「アクセル」と、国の重要な技術を守るための「ブレーキ」をどのように調整するのか、政府は難しい舵取りを迫られている状況でしょう。
このガイドラインのたたき台が5月にまとめられた際、「グローバルな競争を勝ち抜くためには、国内外を問わず一流の企業・研究機関との連携が不可欠」という基本的な考え方が示されました。これまで、日本の大学や研究機関は、外国企業との連携に対してやや慎重な姿勢を見せてきました。その主な理由として、共同研究を橋渡しできる人材や、契約などの実務に対応できるスタッフの不足が挙げられます。さらに、「日本の技術を海外に売った」などと批判されるのを恐れる風潮も少なからず影響していたと考えられます。
総務省のデータによれば、2017年における国内企業から大学・国立研究開発法人への投資額は1,361億円にも上ったのに対し、外国企業からの投資はわずか17億円にとどまっています。しかし、技術開発競争が世界規模で激化する中、国際的な連携に消極的でいては、日本が世界の潮流から取り残されてしまう可能性があります。また、財政が厳しい日本では、政府が大学などに潤沢な研究資金を提供し続けることが難しくなっており、外国企業から投資を呼び込む重要性がこれまで以上に高まっています。こうした時代の要請に応える形で、政府は国際的な産学連携の推進を打ち出し、2018年6月に閣議決定した「統合イノベーション戦略」の中でガイドライン策定の方針を明記しました。
🇺🇸🇨🇳激化する米中対立と「技術流出」リスク
ガイドライン策定に向けた動きが始まった後、米中間の対立が急激に激化しました。アメリカ政府は、自国の先端技術が国外に流出するのを防ぐために、強硬な姿勢を打ち出しており、日本政府も「米国の動向を注視せざるを得ない」(内閣府幹部)状況となりました。その結果、外国企業との産学連携は、当初の「推進一辺倒」というわけにはいかなくなってしまったのです。私はこの状況こそ、日本の技術革新の未来を左右する重大な転換点だと考えています。経済的利益だけでなく、国家の安全保障という観点からも、技術の保護は最優先で考えるべき課題です。
実際、ガイドラインのたたき台には、「『意図せざる技術流出』を防ぐため、関係法令の遵守は重要。それに加え近年はリスクマネジメントも高いレベルで必要」と明記されました。ここでいう法令には、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく安全保障貿易管理が含まれます。これは、軍事転用可能な技術や物資が、テロリストや懸念国に渡るのを防ぐための規制ですが、産学連携における技術提供もこの管理の対象となることが指摘されました。さらに、法令や規則の遵守というレベルを超えた、より高度なリスク管理が大学や研究機関に求められています。これは、これまで国際連携に消極的だった日本の大学にとって、非常にハードルの高い内容と言えるでしょう。
特に、アメリカ政府から制裁措置を課された中国の通信機器大手、**華為技術(ファーウェイ)**などは、これまで外国の大学と積極的に共同研究を進めてきた経緯があります。文部科学省の幹部からは、「今後は中国企業との連携はしづらいだろう」という声も聞かれており、日本国内でも対象となった研究者がいる可能性も指摘されています。SNS上でも、この報道を受けて「技術は国の宝。守るべきだ」「国際連携は大事だが、相手国を見極める必要がある」といった意見や、「研究者の自由な活動が阻害されないか心配」といった懸念の声も上がっています。
政府は、一般からの意見などを踏まえて、年内にもこのガイドラインを正式に決定する見通しです。しかし、当初の目的であった国際的な産学連携が、この新たな規制とリスクの中で、期待通りに進んでいくのかどうか、現時点では強い不透明感が漂っています。このガイドラインが、日本の研究力を強化しつつ、大切な技術を守るためのバランスの取れた指針となることを強く期待したいものです。
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