【海外動向がカギ】日本のスタートアップが成功するための「築城戦略」:ライバル上陸までのタイムリミットを読む

インターネット業界の動向に詳しいGMOペイメントゲートウェイ副社長であり、GMOベンチャーパートナーズのファウンディングパートナーを務める村松竜氏が、SaaSビジネスを志す起業家へ向けた重要な提言をされています。その提言とは、スタートアップを成功に導くために「海外の同業」を徹底的に調査しておくべきだ、というものです。新しい分野で起業を考える知人に村松氏が投げかけた「海外の同業を調べましたか?」というシンプルな質問は、ビジネスの成否を分ける極めて重要な視点を示していると言えるでしょう。

多くの場合、「探したけれど見つからなかった」という回答が返ってくるそうですが、これは探し方が不十分であるか、あるいはビジネスモデル自体に何かしらの課題を抱えている可能性を示唆していると考えられます。しかし、知人は「アメリカに数社存在する」と具体的に回答し、しかも「ベンチャーキャピタル(VC)からの投資も受け、ある程度成長しているようだ」と、さらに詳細な情報を加えています。ここで村松氏は、投資の段階を示す「投資シリーズはどれくらいまで進んでいましたか。シリーズA、B?」と、核心に迫る質問を重ねているのです。

なぜ、海外の同業、特にその投資ラウンドを知ることが日本での起業に不可欠なのでしょうか。その理由は、海外で成功を収めた企業が、非常に高い確率で日本市場に進出してくるからです。彼らはまず、イギリス、オーストラリア、シンガポールといった英語圏をターゲットにし、次に中国や日本といったアジアの主要市場へ展開するのが典型的なパターンです。誰もが知るAmazonやPayPalなどの巨大企業も、過去に同様の戦略で世界を席巻してきました。この海外企業の動向、特に彼らの資金調達の段階を把握することで、日本への進出時期を予測できると村松氏は指摘されています。

投資ラウンドとは、スタートアップ企業が事業を拡大するために、ベンチャーキャピタルなどから資金を調達する段階のことを指します。たとえば「シリーズB」の段階であれば、日本への本格的な上陸まで「あと2年半から3年程度」という大まかな時間が読み取れると言います。この期間こそが、日本の起業家にとって「築城」の時間となります。この猶予期間中に、初期の主要な顧客を獲得し、事業の根幹となる人材アセット(資産)を確立しなければなりません。もし海外のライバル企業がすでに「シリーズD」や「シリーズE」といった増資ステージにあるならば、それは彼らがその国の「業界内トーナメント」で既に優勝を収めつつあり、グローバル展開の準備を本格的に開始しているサインであり、日本の起業家は一層のスピード感をもって対応する必要があるでしょう。

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ライバルを見据えた業界勢力図の把握と戦略決定

さらに重要なのは、海外の同業がどのような顧客層をターゲットにしているか、その「業界勢力図」を想像することです。たとえば「A社の顧客は大手企業」「B社の顧客は小さな小売店」といった具合に、業界内ではターゲット顧客の規模に応じた住み分けがなされていることが多いです。この海外の勢力図こそが、数年後の日本市場における勢力図を予想するための、非常に重要な手がかりになるに違いありません。私が編集者として思うのは、この分析は「市場に隙間があるか」を見つけるだけでなく、「どの隙間を狙うか」を決定するための羅針盤となるということです。

この分析を通じて、自社がA社タイプ(大企業向け)で行くのか、B社タイプ(小規模事業者向け)で行くのかといった、具体的な戦略を決定できます。大企業向けのビジネスモデルを選択するなら、優秀な法人営業部隊の採用に予算を重点的に投じるべきでしょう。一方、カフェなどの小規模事業者をターゲットにするなら、ウェブだけで契約が完了するような、ユーザーフレンドリーなサービス設計が必要になり、優れたウェブデザイナーを探し出すことが重要になります。そして、ライバル企業がいつ上陸してくるかという予測に基づき、それに備えた「守り」を固めておく必要があるのです。

村松氏自身の経験もこの戦略の重要性を裏付けています。約20年前、日本のVC社員としてアメリカに駐在し、現地の事例を徹底的に研究した後に、日本でオンライン決済代行サービスを起業されています。しかし、当時の村松氏にはこの「海外の動向と進出時期の予測」という思考が足りていなかったそうです。その結果、起業した直後に米国のトップ企業が、日本の競合他社と手を組む形で市場に上陸するという、まさに「予想外の事態」に直面されたと言います。この経験は、海外のライバルを過小評価することなく、常に先手を打って対策を講じることの重要性を痛感させるものでしょう。

日本のインターネット業界がグローバル化する中で、起業家はもはや国内だけを見ていては成功できません。海外の成長モデルを学び、ライバルが日本に参入するまでの限られた時間を最大限に活用することが、新規参入企業にとって不可欠な「築城戦略」であると言えるでしょう。村松氏の提言は、2019年6月14日現在、これから起業を考えるすべての挑戦者にとって、まさに金言となるはずです。

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