岩手県の観光名所として名高い岩手銀行旧本店本館、通称「赤レンガ館」(盛岡市)が、この度、地元産業の魅力を発信する新たな拠点として生まれ変わります。岩手銀行は、この貴重な重要文化財を舞台に、県内外から訪れる多くの観光客へ、岩手で育まれた優れた製品を積極的に紹介し、その認知度を高めて地域経済の活性化に貢献していく方針です。レトロモダンな空間で岩手の「いいもの」に出会えるという期待感から、SNSでは「赤レンガ館で工芸品が見られるなんて素敵!」「地元愛を感じる取り組みで応援したい」といった好意的な反響がすでに寄せられています。これは、単なる建物の保存・公開に留まらない、一歩踏み込んだ文化財活用として非常に画期的だと私は考えます。
2019年度は、伝統工芸品に焦点を当てた企画展が開催されます。企画展は「赤レンガ伝統工芸館」と銘打ち、2019年6月29日から6月30日、7月27日から7月28日、10月11日から10月13日、そして11月2日から11月3日の計4回にわたって実施される予定です。テーマには、日本の伝統的な塗り物である「漆器」、繊細な技術が光る「編みかご」、重厚な質感と実用性を兼ね備える「南部鉄器」、そしてスコットランドの伝統的な手織り技術をルーツに持つ「ホームスパン」が選ばれています。これらの企画展を通じて、岩手が誇る熟練の技と美意識が、多くの人々の心に響くことでしょう。
特に注目したいのは、初回となる漆器をテーマにした企画展です。ただ展示品を並べるだけでなく、実際に漆器に甘酒を注いでふるまうという体験型の試みが計画されています。これは、見るだけでなく「触れる、使う」ことを通して、漆器の持つ滑らかな手触りや口当たりの良さといった、五感に訴える魅力を来場者に実感してもらうための工夫です。生活の中で息づく伝統工芸の価値を再認識させる素晴らしいアイデアだと評価できます。岩手銀行は、2020年度以降も、工芸品だけでなく地元の食品など、幅広いジャンルの製品を積極的に取り上げていく方針を打ち出しています。
歴史と建築美:辰野金吾設計の重要文化財
この活動の舞台となる赤レンガ館は、実は非常に由緒ある建築物です。設計を手掛けたのは、東京駅舎をはじめとする数々の名建築で知られる建築家、辰野金吾(たつのきんご)氏です。赤レンガ館は1911年に完成し、その壮麗な姿から国の重要文化財に指定されています。もともとは岩手銀行の中ノ橋支店として長らく現役で営業していましたが、2012年にその役目を終えました。そして、2016年からは一般公開が始まり、東北地方に残る唯一の辰野建築という希少性も相まって、現在では月平均約5,000人もの来館者が訪れる人気の観光スポットとなっているのです。
歴史的な建築物を単なる記念碑としてではなく、地域産業の未来を担う「生きたショールーム」として活用するという岩手銀行の試みは、地方創生における文化財の役割を再定義するものです。美しいレトロな空間は、展示される伝統工芸品の持つ物語や背景をより一層際立たせ、訪問者にとって忘れがたい特別な体験を提供するでしょう。岩手銀行によるこの積極的な取り組みは、地元のブランド力向上と観光誘致の成功事例として、全国的にも注目されていくに違いありません。
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