リニア中央新幹線の建設工事を巡り、静岡県の大井川流域では水の確保に関する議論が白熱しています。2019年09月11日、静岡県の川勝平太知事は、JR東海が提案している「田代ダム」の取水制限案に対し、厳しい姿勢で異を唱えました。この問題は、トンネル掘削に伴い県外へ流出してしまう地下水をいかにして川に戻すかという、プロジェクトの根幹に関わる重要な局面を迎えています。
そもそも今回の議論の焦点となっている「田代ダム」とは、大井川の最上流部に位置し、東京電力が発電のために利用している施設を指します。JR東海は、工事で減ってしまう大井川の流量を補うため、このダムでの取水量を一時的に抑えてもらうよう東京電力に要請する動きを見せました。しかし、川勝知事はこの方針を「本来の筋道から外れている」と一喝し、あくまでJR東海自らの手で解決すべき課題であることを強調しています。
知事が強く求めているのは、工事によって発生した「湧水(ゆうすい)」、すなわち地下から湧き出た水を一滴たりとも漏らさず大井川へ戻すという大原則です。専門的な視点で解説すると、湧水全量戻しとは、トンネルを掘る過程で山から抜けてしまう貴重な水資源を、導水路などを活用して元の河川へ還流させる仕組みを言います。別の企業の利権であるダムの水を調整して帳尻を合わせる手法は、根本的な解決策にはなり得ないというのが知事の揺るぎない主張でしょう。
このニュースに対し、SNS上では「静岡県民にとって命の水である大井川を守ろうとする姿勢は頼もしい」という支持の声が上がっています。その一方で、「リニアの開通がさらに遅れるのではないか」と、国家プロジェクトの停滞を懸念する意見も散見され、ネット上でも賛否が真っ向から対立する形となりました。地域住民の生活基盤である水資源と、次世代の超高速鉄道という、利害が複雑に絡み合う難しい問題であることが改めて浮き彫りになっています。
私個人の見解としては、川勝知事の主張は地方自治体の長として非常に誠実なものであり、筋が通っていると感じます。巨大インフラの開発は確かに国益に繋がりますが、それは地元の犠牲の上に成り立つものであってはなりません。JR東海には、他社のリソースに頼る「場当たり的な対応」ではなく、自社の技術力をもって水循環の維持を証明する、より誠実で透明性の高い説明が求められているのではないでしょうか。
大井川の流量減少は、下流域の農業や工業、さらには生態系にも甚大な影響を及ぼすリスクを秘めています。2019年09月11日の会見で見せた知事の強い決意は、今後のリニア建設に向けた議論において、環境保全の優先順位を再認識させる大きな分岐点となるはずです。今後、JR東海がどのような具体的で科学的な根拠に基づいた解決策を提示し、県側の信頼を勝ち取っていくのか、引き続きこの動向から目が離せません。
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