2019年6月11日から13日にかけて、バレーボール女子の国際大会、ネーションズリーグ東京大会が開催されました。世界ランキング6位の全日本女子「火の鳥NIPPON」は、ブラジル、セルビア、タイと対戦し、2勝1敗という成績を収め、決勝ラウンド進出に辛うじて望みを繋いでいます。しかし、東京オリンピックでのメダル奪回という目標に向け、この3試合を通して見えたチームの姿は、多くの課題を抱えており、道のりの険しさを強く印象付けるものとなったと言えるでしょう。
中田久美監督は、世界ランキング1位のセルビアに逆転勝利した後、「1勝できてよかった。ホッとしています」と会見で胸の内を語っています。この言葉は安堵と同時に、現状への強い危機感の裏返しでもあったと私は感じています。なぜなら、セルビアはオリンピック予選を優先しており、昨年の世界選手権を制した主力選手を欠き、20歳前後の若手主体の編成でこの大会に臨んでいたからです。
本来ならばストレート勝ちを収めたい相手に対して、日本は第1セットでサーブレシーブが乱れ、攻撃がサイドに偏ってしまい、セルビアの高いブロックに捕まるという、ちぐはぐな展開でセットを失ってしまいました。不調だった石井優希選手(久光製薬)に代えて、攻撃のテンポを上げる狙いで鍋谷友理枝選手(デンソー)を投入し、第2セット以降で流れを引き寄せたものの、世界トップレベルの相手と戦う上で、この内容には疑問符がつかざるを得ません。
特にブラジル戦では、レフトからの古賀紗理那選手(NEC)、石井選手によるスパイク攻撃が、ブラジルの組織的な守備に次々と拾われてしまいました。この試合、チーム全体のスパイクの約3分の2以上がレフトの二人に集中するという偏った攻撃になっており、中田監督は「レフトだけに頼りすぎている。一工夫がないと厳しい」と苦言を呈しています。身長やパワーで劣る日本にとって、相手に的を絞らせない多彩な攻撃、すなわちコンビネーションのバリエーションは不可欠です。
両サイドからの攻撃に加え、後衛からのバックアタック、そして中央のミドルブロッカーからのセンター攻撃をいかに効果的に絡ませるかが、日本の得点力を高める鍵となります。この3試合でセッターを務めた佐藤美弥選手(日立)も、「コンビのバリエーション、アタッカーに打ち切らせるという点では足りなかった」と反省の弁を述べており、司令塔もこの重要性を強く認識しているようです。
💡攻撃の多様化と若手の起用に見る光明と不安
中田監督は、センター陣の使い方が巧みな20歳の関菜々巳選手(東レ)を初代表に抜擢し、渡邊彩選手(トヨタ車体)、芥川愛加選手(JT)といった若手ミドルブロッカーを積極的に起用し、チームの攻撃オプションを増やそうと試みています。しかし、現時点では「最適解」は見つかっていない状況です。加えて、本来であれば攻撃専門の対角線アタッカー、すなわちオポジットとしてライトに起用するはずの長岡望悠選手が怪我で欠場していることも、メダルへの道筋を不透明にしている大きな要因でしょう。
一方、セルビア戦で起用された鍋谷選手の「速さ」のある攻撃や、タイ戦でチーム最多得点を挙げた21歳の黒後愛選手(東レ)の決定力は、間違いなくチームにとっての明るい材料です。若手選手のレベルアップもある程度は進んでいると評価できるでしょう。しかしながら、東京オリンピックまで残された強化期間はわずか一年あまりです。一刻も早く、勝利に繋がるチームの「骨格」を作り上げることが求められています。
SNS上では、「確かにブラジル戦はレフトに集まりすぎていた」「若手主体とはいえセルビアに苦戦するのは正直厳しい」といった課題を指摘する声と、「鍋谷選手の思い切りの良さは良かった」「黒後選手の決定力に期待したい」といった若手への期待の声が混在しています。ファンの熱い視線は、この「火の鳥NIPPON」の試行錯誤の日々を追っています。
タイ戦後に「常に危機感は持ってやっている」と語った中田監督。9月のワールドカップまでには、このチームの核となる形を確立し、世界に伍していくための土台を固めてほしいと強く願っています。厳しい状況ではありますが、この試練を乗り越え、真の「火の鳥NIPPON」の姿を世界に見せてくれることを期待しています。
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