アジア屈指の観光大国として知られるタイが、眠らない街の魅力をさらにパワーアップさせようとしています。2019年09月13日、タイの観光・スポーツ省は、一部の観光エリアに限定してバーやクラブといったナイトスポットの閉店時間を、現在の午前2時から午前4時へと2時間延長する方針を明らかにしました。夜のエンターテインメントを充実させることで、訪れる観光客の財布の紐をさらに緩めてもらおうという作戦です。
バンコクやパタヤといった世界的に有名な都市では、すでに多くのアジア最大級と称される歓楽街が軒を連ね、夜な夜な外国人観光客が賑わいを見せています。現地の店主からは、「閉店時間が2時間延びれば、売り上げは30%から40%もアップするに違いない」と期待に満ちた歓迎の声が上がっています。SNS上でも「これでもっと長く遊べる!」「タイの夜がさらに熱くなる」といった旅行者たちのポジティブな投稿が相次いでいるようです。
しかし、今回の「夜遊び推進」とも取れる政策は、これまでの政府の歩みからすると意外な方向転換と言えるでしょう。これまでのタイ政府は、パタヤなどのエリアで警察による大規模な「浄化作戦」を頻繁に実施し、アルコールの販売時間を法律で厳格に管理するなど、「不健全な夜の街」という負のイメージを払拭するために奔走してきました。それだけに、今回の規制緩和のニュースは、国内でも大きな驚きを持って受け止められています。
政府がこれまでの姿勢を覆してまでアクセルを踏んだ背景には、観光客数の伸び悩みという深刻な事情が隠されています。2019年上半期(01月〜06月)の観光客数は前年同期比でわずか1%増に留まっており、当初掲げていた年間目標を下方修正せざるを得ない事態に追い込まれました。経済の柱である観光産業の減速は、タイ政府にとって何としても食い止めなければならない、まさに「火急の要件」となっているのが実情です。
特に打撃となっているのが、旺盛な消費意欲を誇る中国からの観光客の減少でしょう。2018年にプーケット島付近で発生した悲劇的なボート転覆事故以降、主力であった中国人旅行者の足が遠のいてしまいました。タイにとって観光はGDP(国内総生産)、つまり国が1年間に生み出した利益の約2割を占める非常に重要な基幹産業です。そのため、太っ腹な中国人が戻ってこない現状は、国家経済を揺るがす死活問題となりつつあります。
もちろん、この大胆な規制緩和に対して、事故や犯罪の増加を懸念する市民団体などからは厳しい批判の声も挙がっています。過度な飲酒によるトラブルの発生や治安の悪化を危惧する意見は、当然ながら根強いものです。しかし政府は、この「魔法の2時間」を解禁することで、観光客が1日に消費する金額を約25%も底上げできると試算しており、経済的なメリットを最優先させてでも起爆剤にしたいという強い意志が伺えます。
私個人の見解としては、観光業が国の背骨を支えているタイにおいて、この施策は合理的な判断だと言わざるを得ません。文化的な浄化も大切ですが、経済が冷え込んでしまっては元も子もないでしょう。もちろん、飲酒運転の取り締まりや警備の強化といった安全策がセットであることが大前提です。この2時間の延長が、タイを再び「アジアの眠らぬ宝石」へと進化させるターニングポイントになるのか、世界中がその行方に注目しています。
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