【2020年春闘の行方】全トヨタ労連が示す「CASE」時代の新たな賃金戦略と経済への警鐘

2019年09月13日、名古屋市において自動車業界の未来を左右する重要な会議が幕を開けました。トヨタグループの労働組合で構成される「全トヨタ労働組合連合会(全トヨタ労連)」が定期大会を開催し、2020年の春季労使交渉、いわゆる「春闘」に向けた舵取りを議論し始めています。約35万1千人の組合員を抱える巨大組織の動向は、日本経済全体の景気動向を占う試金石となるでしょう。

記者会見に臨んだ鶴岡光行会長は、世界経済の先行きに対して非常に慎重な姿勢を崩しませんでした。現在、世界を揺るがしている米中貿易摩擦や日米通商協議の行方は、輸出産業の柱である自動車業界にダイレクトな影響を及ぼします。経済の見通しについて「より慎重にみる必要がある」との言葉からは、これまでの右肩上がりの成長神話に頼れない、緊迫した現場の空気感が伝わってきます。

SNS上では「トヨタのような超一流企業でもこれほど慎重なのか」「世界情勢の不安定さが自分の給料に直結する怖さを感じる」といった、労働者層からの不安や共感の声が目立ちます。特にCASE(ケース)と呼ばれる「つながる車、自動運転、シェアリング、電動化」という技術革新の波は、従来の「車を作って売る」というビジネスモデルを根底から覆そうとしており、現場に大きな変革を強いています。

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100年に1度の変革期「CASE」と「MaaS」が変える労働の価値

自動車産業は今、まさに「100年に1度の大変革期」の渦中にあります。ここで重要になるキーワードが、先述の「CASE」と、サービスとしての移動を指す「MaaS(マース)」です。これらは単なる技術用語ではなく、競争の舞台がハードウェアからソフトウェアやプラットフォームへと移行することを意味します。鶴岡会長は、組合が単なる要求者ではなく、経営の「カウンターパート(対等なパートナー)」として役割を果たすべきだと主張しました。

私自身の見解としても、この姿勢は極めて合理的だと考えます。技術革新によって仕事の内容が劇的に変わる中、昔ながらの「一律ベア(ベースアップ)」だけを追い求める時代は終わりました。ベースアップとは、年齢や勤続年数に関わらず労働者全体の基本給を一斉に引き上げることを指しますが、今は「労働の質的向上」や、個々のスキルに応じた適正な評価がこれまで以上に求められているのです。

2019年10月に予定されている消費税増税や物価の変動も、家計を預かる労働者にとっては無視できない不安要素です。全トヨタ労連は、単に「いくら上げるか」という金額の積み上げだけでなく、大手企業と中小企業の間にある格差をどう是正していくかという、業界全体の底上げを重視する方針へ転換しました。これは、日本の製造業の屋台骨であるサプライチェーン全体を守るための、英断と言えるでしょう。

働き方に応じた柔軟な賃金制度の構築は、多様な人材が活躍するために避けては通れない道です。2019年09月14日まで続くこの定期大会での議論は、単なる一企業の決定を超え、日本全国の労働環境に一石を投じることになるはずです。私たちは、技術の進化がもたらす恩恵が、現場で汗を流す一人ひとりの処遇にどう反映されるのかを、しっかりと見守っていく必要があるでしょう。

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