2019年6月11日から13日にかけて米国で開催された世界最大級のゲーム見本市「E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)」を巡って、日本のゲーム関連企業の株式市場に売り圧力がかかっている状況です。任天堂やスクウェア・エニックス・ホールディングス(スクエニHD)といった大手企業の注目タイトルに関する発表はあったものの、市場が期待していたほどのサプライズがなく、日本勢の存在感が相対的に薄れてしまったことが主要な原因だと考えられます。
実際、E3開幕前日の2019年6月10日の終値を基準に見ますと、任天堂の株価は約5%、スクエニHDに至っては約7%もの下落幅を記録しており、この期間の日経平均株価がほぼ横ばいで推移していたことと対照的な値動きを示しました。これは、E3での発表内容が、株価をさらに押し上げるような成長への期待を高める材料には繋がらなかったことを明確に物語っていると言えるでしょう。
任天堂は、世界的な人気を誇る看板シリーズ「ゼルダの伝説」や、根強いファンを持つ「どうぶつの森」の最新作について公表しました。しかし、多くの投資家やゲーマーが待ち望んでいた携帯型ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の新モデルに関する言及が一切なかったことは、株価の伸びを抑制した一因になったと推測されます。また、スクエニHDは、過去の名作のリメイク(再制作)作品の発表が中心となり、これもまた市場の「新しい一手」への渇望を満たすには至りませんでした。さらに、PlayStationを展開するソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が、この年のE3への出展を見合わせたことも、結果として日本勢全体の話題性を低下させる要因になったと考えられます。
振り返ってみると、任天堂株は2019年4月に中国の巨大IT企業である騰訊控股(テンセント)との協業による中国市場開拓のニュースを背景に急騰していました。また、スクエニHD株も、人気RPG(ロールプレイングゲーム)シリーズ「ドラゴンクエスト」の世界観を取り入れた位置情報ゲーム、「ドラゴンクエストウォーク」の発表を受けて2019年6月初旬に上昇基調にありました。証券ジャパンの大谷正之調査情報部長は、E3での発表がこれらの株価上昇のきっかけとなった期待値の範囲内に留まったことで、「一旦、利益を確定しようという狙いから売りが出やすくなった」と分析しており、短期的な利益確定売りが株価を押し下げたとの見方が有力です。
👀ゲーム業界の勢力図に変化の兆し:異業種参入の衝撃
今回のE3で、日本勢の存在感が薄れた一方で、大きな話題をさらったのは、異業種からの新規参入組でした。特に、米国のIT大手グーグルや、映像ストリーミングサービスのネットフリックスといった企業が、ゲーム市場への本格参入の意欲を示す発表を行ったことが注目を集めました。グーグルは、ストリーミング形式で高画質なゲームをプレイできるクラウドゲーミングサービス「Stadia(ステイディア)」の具体的な提供情報などを公表し、大きな反響を呼びました。ネットフリックスも、人気作品をゲーム化するなど、コンテンツの多角化を進める姿勢を見せています。
これらの強力な異業種企業がゲーム市場に参入することで、競争が一段と激化するだろうとの見方が広がっています。このような環境変化への警戒感も、ゲーム株全体を手掛けにくくさせる一因となった可能性があります。これは、従来のゲーム専用機やパッケージソフトのビジネスモデルとは異なる、クラウドやサブスクリプション(定額制サービス)を主軸とした新しいビジネスモデルが、既存のゲームメーカーにとっての脅威となり得ることを示唆しています。
私見になりますが、これは日本のゲームメーカーにとって、従来の強みであるIP(知的財産)の創造力や、高品質なゲーム開発能力を、いかに新しい技術やビジネスモデルに適応させていくかという、重大な課題を突き付けていると言えるでしょう。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上では、「任天堂の新作は待ち遠しいけれど、ハードの新情報がなかったのは残念」「Stadiaの登場でゲームの遊び方が変わりそう」といった、期待と不安が入り混じった意見が多く見受けられました。
E3 2019は、単なる新作発表会ではなく、ゲーム業界の構造そのものが変わりゆくターニングポイントだったのかもしれません。今後のゲーム市場の動向、そして日本を代表するゲーム企業の戦略に、引き続き注目が集まることでしょう。
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