15世紀から20世紀にかけて、医療の世界では現代の私たちには想像もつかないような治療法が「善意」のもとに続けられてきました。リディア・ケイン氏とネイト・ピーダーセン氏が著した書籍は、そんな“危険な”医療の世界史を紐解く一冊です。たとえば、かつては子どもの夜泣きを鎮めるためにアヘンとモルヒネを調合した薬が用いられていました。また、紀元前から2000年以上にわたり、弱った患者の体から血を抜き取る「瀉血(しゃけつ)」という治療法が医師たちに広く支持されていたという事実は、特に驚きをもって迎えられるでしょう。
この瀉血は、かの有名な作曲家モーツァルトやアメリカ初代大統領のジョージ・ワシントン、さらには詩人のバイロンといった歴史上の偉人たちにも施されていますが、皮肉にもその治療後まもなく彼らは息を引き取っています。本書で紹介される数々の医療行為の恐ろしい点は、それらが当時の医師たちの「患者を助けたい」という純粋な善意から行われていたことです。しかし、科学的な知見が不足していた時代、この無知という状況下では、いかに強い善意であっても必ずしも良い結果を生むわけではないという厳しい現実を突きつけられます。私たちは、科学が著しく発展した現代に生きていることに改めて感謝すべきでしょう。
無防備に飛びつくことの危険性:詐欺的医療と新技術の落とし穴
さらに本書では、詐欺的な要素を含む医療も紹介されています。その一つが「ラジオニクス」と呼ばれるもので、病人が発する「病んだ周波数」を健康的なものに変換すると謳われていました。また、新しい技術や物質に対する無防備さから生じた悲劇もあります。1920年代のアメリカでは、放射性物質であるラジウムが「万能薬」としてドリンクに添加され、“ラジウム飲料”として発売されました。これを大量に摂取した富豪たちが全身被曝により亡くなったという痛ましい事例は、新しい技術や物質が持つ危険性を軽視し、無批判に飛びつくことの恐ろしさを痛感させられます。
この書籍は、人々の「生きたい」と願う切実な思いがいかに強く、時にその判断の目を曇らせてしまうのかを深く教えてくれます。当時の人々は、藁にもすがる思いでこれらの治療法に頼ったに違いありません。だからこそ、私たち現代人は、適切な医療とそうではない医療を見分ける力を養う必要があります。過去の失敗例を教訓として知っておくことは、自分自身の身を守るための重要な知識となり、今後の医療技術との向き合い方にも大きな価値をもたらすでしょう。この歴史を知ることは、現代の医療選択において、私たちに必要な冷静な判断力を与えてくれるはずです。
本書は文芸春秋から2,200円で出版されており、福井久美子氏による翻訳で、2019年6月15日に紹介されました。ソーシャルメディア上では、「歴史上の偉人が瀉血されていた事実に衝撃を受けた」「過去の医療が現代のホラー映画よりも怖い」といった驚きの声が多数見受けられます。また、「現代医療のありがたさを再認識した」「医療の進歩は失敗の積み重ねだとわかった」など、医療への感謝と教訓を得たという読者の反響も多く、歴史の事実から学ぶことの重要性が改めて認識されているようです。
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