日本に眠る「190万人」の商機!フィンテックが切り拓く金融包摂の最前線と未来図

銀行口座を持たなくてもスマートフォン一つで送金が完了し、土の中に隠した現金が害虫に食い荒らされる不安からも解放される。そんな魔法のような変化が、今、アフリカやアジアの途上国で現実のものとなっています。これらは金融と最新のIT技術を融合させた「フィンテック」がもたらした恩恵であり、社会のあらゆる層へ金融サービスを届ける「金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)」という概念を象徴する出来事です。

金融包摂とは、貧困や居住地域などの理由で銀行などの公的なサービスから排除されている人々に対し、安価で適切な金融手段を提供する試みを指します。これは国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも不可欠な要素として、世界中のフィンテック企業が合言葉のように掲げてきました。しかし、2019年09月17日現在の日本において、この言葉はどこか遠い国の出来事のように受け止められがちです。

日本銀行の初代フィンテックセンター長を務めた岩下直行氏は、日本人がこの言葉にピンとこない理由を、明治時代には既に金融網が整備され、国民の多くがシステムに組み込まれていたからだと指摘します。確かに、街中にはATMが溢れ、サービス過剰とも言えるほど利便性は高いかもしれません。しかし、私はこの「日本は既に満たされている」という定説に、あえて疑問を投げかけたいと考えています。

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「信用」の定義を書き換えるスタートアップの挑戦

実は、サービスが行き届いているはずの日本にも、既存の金融システムから取り残された「辺境」が存在します。その一例が、東京都港区に拠点を置くグローバルモビリティサービス(GMS)の取り組みです。彼らが注目したのは、過去の支払い遅延などの信用情報の傷により、自動車ローンの審査に通らない人々です。その数は日本国内だけで約190万人、人口の約1.5%にものぼると言われています。

GMSは、車に独自の遠隔制御装置を搭載することで、従来の信用調査に頼らない融資を実現しました。特筆すべきは、日々の安全運転や仕事への勤勉さをデータ化し、それを新たな「信用」として積み上げていく仕組みです。もし支払いが滞れば遠隔操作でエンジンを始動できなくする一方、真面目に働く人の未来を担保にするこのモデルは、デフォルト(債務不履行)率1%未満という驚異的な数字を叩き出しています。

このビジネスの原点は、中島徳至社長がフィリピンで目にした「働きたくても車が買えない」という切実な現実でした。途上国で成功したこのモデルを日本へ逆輸入することで、潜在的な借り手に光を当てたのです。SNSでも「真面目な人が報われる仕組み」「技術が優しさを支えている」と大きな反響を呼んでおり、テクノロジーが社会の歪みを正す力を持っていることを証明しています。

21世紀の石油「データ」を攻めの武器に変える

私は、これからの日本が国際的な競争力を維持するためには、こうした「見えない空白地帯」を見つけ出す力が必要だと確信しています。そのための最大の武器は、やはりデータの活用に他なりません。政府によるキャッシュレス決済の推進もあり、人々の行動がデータ化される流れは加速しています。しかし、真の課題は蓄積された膨大な情報をいかに顧客や社会の利益へと還元するかにあります。

既存の金融機関は、古くから給与振込や住宅ローンなどの貴重なデータを保有する「情報の宝庫」でした。しかし、その多くは情報を守ることに終始し、攻めのビジネスに活用できていないのが実情です。個人情報を預かりビジネスに繋げる「情報銀行」という構想も、保守的な組織風土が壁となり、明確な収益モデルを描けていません。だからこそ、柔軟な発想を持つスタートアップが活躍する余地は十分に残されているのです。

データの賢い活用によって、目の肥えた日本の消費者を驚かせるような新機軸を打ち出せれば、それは必ず世界でも通用するモデルとなります。アジアで培った知恵を日本へ持ち込み、日本で磨いた技術を再び世界へ送り出す。そんな豊かさの循環を生み出すフィンテックの可能性に、私は大きな期待を寄せています。既成概念を疑い、辺境を切り拓く勇気こそが、次世代の金融を作る原動力になるでしょう。

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