2019年08月20日、世界中が固唾をのんで見守る英国の欧州連合(EU)離脱問題。英誌エコノミストは、現在の混迷と対比させるように、かつて英国と欧州大陸が最も近かった時代の記憶を呼び覚ます記事を掲載しました。ボリス・ジョンソン首相のもとで「合意なき離脱」の現実味が増す中、欧州の人々が英国のリーダーに対し、率直で分かりやすいと感じられたのは、遥か昔の1990年代後半が最後だったのかもしれません。
当時のトニー・ブレア首相は、まさに欧州の政治指導者たちを魅了する存在でした。彼は流暢なフランス語を操り、フランス人の心をつかむと同時に、オランダで開催されたEU首脳会議では、アムステルダムの街を他国の首脳たちと共に自転車で駆け抜けるパフォーマンスを見せたのです。その姿は、頑固で孤立した島国のイメージを覆し、近代的で親しみやすいパートナーとしての英国を印象付けたといえるでしょう。
「クール・ブリタニア」と「第3の道」が示した希望
当時の英国は、音楽やファッションが世界的なブームを巻き起こす「クール・ブリタニア」の時代でした。これは1990年代後半、ビートルズ以来の英国ポップカルチャーの再流行を指す言葉で、国全体が若々しいエネルギーに満ち溢れていたのです。また、政治面でもブレア氏は、当時のドイツのシュレーダー首相と共に「第3の道」を歩んでいました。これは、従来の社会民主主義と新自由主義の中間を目指す政策で、イデオロギーの対立を超えた協調路線の象徴だったのです。
大英帝国の解体以降、英国はずっと欧州に対する複雑な「わだかまり」を抱え続けてきました。しかし、あの時代だけは、英国がついに過去のしがらみを捨て去り、近代欧州の一員としてのアイデンティティーを心から受け入れたかのように見えたのです。現在の断絶が嘘のように、海峡を挟んだ両者の心は通い合っていたのではないでしょうか。
SNSでの反響と編集後記
この記事に対し、SNS上では「あの頃の英国は輝いていた」「今の政治的混乱を見ると、まるで別の国の話のようだ」といった、当時を懐かしむ声や現状を嘆く投稿が相次いでいます。特に、現在の強硬な離脱姿勢と比較し、「信頼関係を築くには何年もかかるが、壊すのは一瞬だ」という諦めに似た意見も散見され、人々の不安が浮き彫りになっています。
私自身、この変貌ぶりには心を痛めずにはいられません。かつて文化と対話で世界をリードした英国が、いまや「合意なき離脱」という袋小路へ突き進もうとしている現状は、あまりにも皮肉な展開です。外交において最も重要なのは、相手に対する敬意と共通言語を持つことですが、現在の英国政府からはその姿勢が欠落しているように思えてなりません。10月末の離脱期限に向け、英国が再び「理性の道」を見出すことができるのか、注視していく必要があるでしょう。
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