2019年08月23日、世界経済を揺るがす大きな衝撃が走りました。米中両政府が互いの輸入品に対して更なる報復関税をぶつけ合う事態となり、貿易戦争はもはや「全面衝突」の様相を呈しています。中国政府は2019年09月と12月の2段階に分け、米国製の5078品目、約750億ドル分に追加関税を課すと発表しました。これにより、米国産の農産物や原油といった、アメリカ経済の根幹を支える輸出産業に甚大な影響が及ぶことは避けられないでしょう。
この中国側の動きに対し、トランプ米大統領はすぐさま激怒の声を上げました。米国通商代表部(USTR)は、すでに実施されている制裁関税第1弾から第3弾までの税率を現行の25%から30%へと一気に引き上げることを即日決定。さらに、これから発動予定の第4弾についても当初の10%から15%へと上乗せする構えを見せています。関税という盾と矛の応酬は、もはや輸入品の品目数を競う段階を超え、その「高さ」で相手を圧倒する持久戦へと突入したようです。
SNS上では、トランプ大統領の「米国企業に中国からの生産移管を命じる」という異例の投稿が大きな波紋を呼んでいます。「本当にそんな強制ができるのか」という驚きの声から、「これで脱中国が加速する」という予測まで、意見は真っ二つに分かれました。しかし、現場の企業にとっては笑い事ではありません。供給網(サプライチェーン)と呼ばれる、部品調達から製造、販売に至るまでの一連の流れが根本から破壊されようとしているからです。
通貨安競争の懸念と「チャイナ・プラス・ワン」への加速
今回の関税引き上げの背景には、高度な経済的駆け引きも隠されています。中国は米国の関税攻撃を和らげるため、自国の通貨である「人民元」の価値をあえて下げる「元安容認」の姿勢を見せていました。通貨の価値が下がれば、輸出製品の価格競争力が増すため、関税分を相殺できる仕組みです。これに対し米国は、関税率をさらに引き上げることで、その元安効果を文字通り「帳消し」にしようと画策しており、執念すら感じさせる対抗策と言えます。
このような泥沼化する対立の中で、私は企業の「脱中国」がもはや選択肢ではなく、生存戦略になると確信しています。特定の国に依存しすぎることのリスクを分散させる「チャイナ・プラス・ワン」の動きは、これまでも囁かれてきましたが、今回の関税合戦は背中を押すどころか、崖から突き落とすほどの衝撃を与えました。Appleをはじめとする多国籍企業は、一刻も早い供給網の再編を迫られており、東南アジアなどへの生産拠点移転は一気に現実味を帯びてくるでしょう。
2019年08月現在、米中両国は9月に予定していた閣僚級協議の開催すら危うい不透明な状況にあります。中国側がさらに人民元安を誘導すれば、世界的な通貨安競争に発展し、金融市場がパニックに陥るリスクも否定できません。米国がレアアースなどの代替が難しい品目を制裁対象から外している点は、唯一の「冷静な計算」に見えますが、感情的な対立が先行する現状では、世界経済の減速リスクはかつてないほど高まっていると警鐘を鳴らさざるを得ません。
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