飲料業界の老舗、ダイドーグループホールディングスが自販機事業の再建に向けて大きな舵を切りました。2019年03月にオフィス向け無人コンビニを手掛けるスタートアップ企業「600(ろっぴゃく)」へ出資を行い、戦略的な提携を開始したのです。この協力体制を通じて、オフィス内などの需要が見込める「クローズドロケーション」への設置比率を、3年後には現在の4割から5割へと引き上げる計画を打ち出しています。
現在、ダイドーの連結売上高の約7割を国内飲料事業が占めており、そのうちの8割が自販機による売り上げという、まさに自販機が経営の命綱となっています。しかし、安価な価格設定を武器にするコンビニやドラッグストアの台頭により、自販機の利用機会は減少傾向にあります。飲料総研のデータによれば、国内飲料市場における自販機の販売比率は2018年には27%にまで落ち込み、10年前の35%から大きく後退しているのが現状です。
そこで白羽の矢が立ったのが、オフィス内で手軽に買い物を楽しめる「無人コンビニ」という新しいビジネスモデルです。提携先の「600」は、冷蔵庫サイズの自販機で弁当や総菜、さらには文房具まで提供し、利用企業のニーズに合わせた品揃えを実現しています。ダイドーはこの「600」のシステムを導入する企業に対し、自社の自販機を併設することを条件に、企業側が支払う月額利用料を肩代わりするという大胆な攻めの姿勢を見せています。
ネット上のSNSでは「仕事中に外に出なくて済むのは助かる」「ダイドーのコーヒーがすぐ飲めるのは嬉しい」といった期待の声が上がる一方で、「設置場所の争奪戦になりそう」という競合を懸念する意見も見受けられます。こうした期待に応えるべく、ダイドーは2022年01月期までに好立地への設置を加速させる方針です。これに伴い、営業体制も大幅に強化し、2020年01月期の下期から来期にかけて約100名の中途採用を計画しています。
IoT化と商品力の強化が鍵を握る未来の自販機戦略
ダイドーは物理的な設置場所の拡大だけでなく、テクノロジーによる効率化にも巨額の投資を惜しみません。3カ年の中期経営計画では既存事業に120億円を投じる方針で、その半分の60億円を自販機の「IoT(モノのインターネット)化」に充てます。IoTとは、あらゆる機器をネットに繋いで情報をやり取りする技術を指します。これにより、商品の売れ行きをリアルタイムで把握し、売り切れによる販売機会の損失を徹底的に排除することが可能になります。
編集者の視点から見れば、この取り組みは単なる販路拡大に留まらず、労働環境の質を高める「福利厚生」としての自販機の再定義だと感じます。利便性を極限まで高める戦略は極めて現代的です。一方で、専門家からは「誰もが知る強力なブランド飲料の育成が必要」という厳しい指摘も出ています。デジタル技術による効率化と並行して、消費者が「どうしてもこれが飲みたい」と思えるような、圧倒的な商品力の強化が今後の命運を分けるのではないでしょうか。
コメント