【和歌山・田辺市発】空き家問題を近隣協力で解決!費用を抑えて土地取得も可能にする画期的仲介・補助金制度の全貌

近年、全国的な課題となっている空き家問題ですが、和歌山県は特に深刻で、総務省が2018年10月に発表したデータによると、県の空き家率は前回調査(2013年10月)から2.2ポイント増加し、20.3%に達しました。これは山梨県に次いで全国で2番目の高さとなっており、人口減少が進む和歌山県において、山間部だけでなく全県的な取り組みが求められています。その中で、和歌山県中部に位置する田辺市が、老朽化した空き家の解消に向けて、近隣住民の協力を引き出すという、画期的な取り組みを始め、注目を集めています。

田辺市が独自に構築したこの制度は、市が仲介役となり、空き家所有者と近隣住民の双方に利益をもたらす仕組みです。具体的には、解体費用が捻出できない空き家所有者に対して売却を提案し、その隣接地の住民には、解体費用や登記費用に相当する比較的安価な価格での買い取りを提案するものです。この際、市は解体費用として最大50万円の補助金を提供します。所有者は売却資金を解体費用に充てて更地にすることができ、近隣住民は懸念材料だった隣地を安く手に入れられるという、まさに「一石二鳥」の仕組みと言えるでしょう。市建築課の担当者によれば、この制度は「当事者が利益を求める場合は対象外」であり、「双方が最小限の負担で空き家のリスクを除去するのが目的」とされています。

この取り組みは2017年からスタートしており、きっかけは近隣住民からの相談でした。当初は「贈与」という形で解決しましたが、その後の事例で近隣住民への「買い取り」を提案し、解決に繋がったことで、市はこの仕組みの有効性を確信し、現在の制度を確立しました。この制度の対象となるのは、不動産としての価値が低く市場で流通しない物件や、所有者に解体資金がないといった条件を満たす、特に老朽化が進んだ物件です。市内の約1,800戸の空き家のうち、約90戸がこの範疇に含まれると見られています。

実際にこの制度を活用した事例も出ています。JR紀伊田辺駅から車で15分ほどの場所に住む88歳の無職の古井清春さんは、2018年に自宅隣の老朽化した空き家を約140万円の負担で買い取りました。それまでボロボロの屋根や壁、散乱した木材が台風で飛んでくる心配がありましたが、解消された今、約200平方メートルの土地を駐車場や畑として有効活用されています。また、一度は市の提案を断ったものの、2018年9月の台風で隣の空き家から瓦が飛んできて自家用車やエアコンの室外機に被害が出たことをきっかけに、約130万円で隣地を取得することを決めた32歳の会社員の男性の事例もあります。男性の妻も「無駄な出費ではない」と納得されており、災害リスクの回避という観点からも、この制度が地域住民に受け入れられていることが伺えます。

このような取り組みは、空き家対策が「所有者責任で処分するのが原則」とされる中で、地域の実情に応じた柔軟な解決策として、国土交通省からも「一つの解決手段だ」と評価されています。通常、所有者が不明な物件については、市が戸籍や登記を調べて所有者を特定し、県外まで赴いて提案することもあるなど、市が積極的に仲介役を担っているのです。これまでに19件の仲介を手がけ、18件で売買が成立しているという実績は、この制度の実効性の高さを証明していると言えるでしょう。

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和歌山県内の他自治体も注目!町費負担が少ない画期的な解決モデル

和歌山県内の他の自治体も、田辺市の取り組みに強い関心を寄せています。例えば、那智勝浦町では、2019年5月に、所有者不明で放置されている空き家について、6月16日までに解体されない場合は町費で撤去することを決定しました。しかし、この町費負担という方法は、自治体の財政に大きな負担を強いることになります。それに対し、田辺市の制度は、町費の負担が少ないという大きな利点があるため、那智勝浦町の担当者は「今後、導入できないか研究したい」と述べています。

和歌山県全体の空き家問題は深刻化しており、田辺市(18.9%)、那智勝浦町(24.1%)、串本町(26.6%)など、山間部が多い地域では特に空き家率が目立っています(いずれも2013年時点のデータ)。人口が関西2府4県で唯一100万人を割り込み、田辺市だけでも2000年の人口8万5,600人から2015年には7万4,700人に減少するなど、人口減少が主な要因となっています。このため、市への空き家に関する問い合わせも増加しており、2018年度には153件に上っています。県都である和歌山市も2016年4月に空き家対策専門の「空家対策課」を立ち上げるなど、県内各地で対策が進められている状況です。

私は、この田辺市の取り組みは、「所有者責任」の原則を尊重しつつも、現実的な解体資金の問題と、地域住民が抱える隣地リスクを同時に解決するという点で、極めて優れたモデルだと考えます。空き家を所有する方々の高齢化や経済的な困難は避けられません。このような状況下で、行政が積極的に仲介役となり、補助金という形で支援し、**「地域全体でリスクを取り除く」**という考え方は、今後の日本の空き家対策における新たなスタンダードとなる可能性を秘めています。特に、不動産価値が低く、市場原理だけでは解決が難しい地方の空き家問題に対して、全国の自治体が参考にすべき、地域密着型の解決策だと言えるでしょう。

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