ウィーワーク上場延期で「ユニコーン企業」神話に終止符?投資家が突きつける「事業の質」とシビアな現実

2019年09月19日、世界の投資シーンを揺るがす大きなニュースが飛び込んできました。シェアオフィス界の巨人として快進撃を続けてきた「ウィーワーク(WeWork)」を運営する米ウィーカンパニーが、計画していた新規株式公開(IPO)の延期を余儀なくされたのです。これまで「ユニコーン」と呼ばれる未公開の急成長企業は、赤字を垂れ流してでも規模を拡大すれば評価されるという、ある種の熱狂の中にありました。しかし、今回の延期はその魔法が解け始めた象徴的な出来事といえるでしょう。

SNS上でもこのニュースは瞬く間に拡散され、「やはり実体がないバブルだったのか」「共有オフィスという不動産業なのにテック企業を名乗るのは無理がある」といった厳しい声が相次いでいます。投資家たちの視線は、もはや単なる「成長性」という言葉だけでは欺けなくなっているようです。膨れ上がった期待に対して、中身が伴っているのかを厳しく問う「選別」の時代が、いよいよ幕を開けました。かつての楽観ムードは影を潜め、市場には緊張感が漂い始めています。

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不透明な収益モデルとガバナンスへの疑念

ウィーワークが足踏みを強いられた背景には、主に3つの懸念材料が存在します。第一に、巨額の赤字を出し続けながら拡大を優先するビジネスモデルの持続性です。第二に、自らを「AI(人工知能)などを駆使するハイテク企業」と定義していますが、実態は「オフィス賃貸業」ではないかという評価のズレです。そして第三に、創業者であるアダム・ニューマンCEOに権限が集中しすぎる、不透明な「企業統治(ガバナンス)」のあり方が大きな問題として浮上しました。

ここで言う「企業統治」とは、会社が不正を行わず、株主の利益のために正しく運営されるよう監視する仕組みを指します。ウィーワークは、ニューマン氏に対して通常の20倍という破格の議決権を与えようとしましたが、これが「あまりに独裁的だ」と機関投資家から猛反発を浴びました。1月時点では、ウィーワークの時価総額想定は約5兆円(470億ドル)とされていました。しかし、同業の黒字企業である英IWG(旧リージャス)に比べて、その評価額は実に10倍以上と、実態に合わない高騰ぶりが鮮明になっています。

こうした状況について、私は「今のブームには、かつてのドットコム・バブルを彷彿とさせる危うさがある」と感じています。夢を売るだけで収益化が見えないビジネスに対して、冷静な「待った」がかかったのです。ネット通販やSNSの台頭により、かつては「勝者総取り(ウィナー・テイク・オール)」という、一社が市場を独占すれば利益が後から付いてくるという考え方が主流でした。しかし、今の投資家は「本当に利益は出るのか?」という本質に立ち返っています。

デジタル時代の勝敗を分かつ、収益性の真実

2019年09月12日に上場した、マウスピース型矯正器具の「スマイルダイレクトクラブ」も、初日の終値が公開価格を3割近く下回るという苦い結果となりました。また、配車大手のウーバーやリフトといった、これまでのユニコーン代表格も、上場後は期待を裏切る株価推移を見せています。これらの企業に共通するのは、規模は巨大でも「赤字からの脱却」が見えない点です。一方で、ビデオ会議で急成長する「ズーム」のように、着実に利益を上げている企業の株価は堅調に推移しています。

かつて1990年代にインターネットが普及し始めた際も、技術への期待が先行しすぎて、実際に企業が利益を上げられるようになるまでには、スマートフォンなどのインフラ整備が必要でした。今のAIや自動運転技術も、夢のような可能性を秘めてはいるものの、ビジネスとして「稼ぐ力」を持つまでにはまだ時間がかかるはずです。現在の景気後退がささやかれる中で、機関投資家は夢を語るだけの企業よりも、足元の数字を冷徹に見極める「目利き」へと変貌しています。

今後は、ユニコーン企業がただ「未公開市場」で多額の資金を調達すれば安泰という時代は終わります。資金を投じる側も、赤字を許容してまで成長を促すのではなく、どれだけ健全な経営を行っているかを厳しく精査するでしょう。ウィーワークの挫折は、まさに「魔法の杖」を振るうだけで価値が上がった時代への決別宣言なのです。企業は再び、本質的な価値と持続可能なビジネスの構築を問われることになります。これこそが、資本主義が持つ本来の健全な姿ではないでしょうか。

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