2019年09月18日、ソニーは開発中の最新技術をお披露目する「テクノロジーデイ」を初めて開催しました。登壇した吉田憲一郎社長は、自社の技術によって「空間と時間の価値創造」に取り組むという、壮大なビジョンを打ち出しています。ここで言う「空間」とは映像や音響による圧倒的なリアリティを指し、「時間」とはライブ体験などをリアルタイムで共有することを意味しているそうです。
会場で特に注目を集めたのは、実写の人物を遅延なく立体空間へ合成する驚きの技術でした。これはVR(バーチャルリアリティ:仮想現実)と組み合わせることで、あたかもその場にいるかのような没入感を生み出します。SNS上でも「ソニーの技術力はやはり別格」「エンタメの未来がここにある」といった期待の声が数多く寄せられており、人々の関心の高さが伺えます。
さらに、加速度センサーなどを体に装着して全身の動きを再現する「モーションキャプチャー」のデモも披露されました。AI(人工知能)が関節の動きを推論することで、カクつきのない滑らかな動作を実現しています。これらの技術は、ゲーム制作や映画のクオリティを劇的に引き上げる原動力となるでしょう。まさにクリエイティビティを支える「魔法の杖」と言えるかもしれません。
短期的な成果を超えて!3年から10年先を見据えた「長期経営」への転換
吉田体制になってからの大きな変化は、経営の時間軸にあります。前任の平井一夫氏の時代は構造改革という「負の遺産」の整理に追われ、短期的な数字が求められていました。しかし現在は、3年から10年先を見据えた「R&D(研究開発)」に軸足を移しています。自分の任期中に結果が出ないことでも、次世代のために種をまくという姿勢は、真に誠実な経営のあり方だと感じます。
優秀なエンジニアを確保するための採用戦略も、驚くほど大胆に変化しています。R&Dセンターの人員を2割増やしただけでなく、AIなどの先端分野に精通した新人には、入社初年度から年収を最大2割上乗せする制度を導入しました。従来の「横並び」という悪平等を打破するこの決断は、熾烈を極める世界的な人材獲得競争において、非常に賢明な判断ではないでしょうか。
また、外部との連携を深めるため、大和証券グループと共同で「イノベーション・グロース・ファンド」を設立しました。これまでソニーが行ってきた自社資金による投資(CVC:コーポレートベンチャーキャピタル)では、1件あたりの投資額に限界がありましたが、新ファンドでは数十億円規模の出資が可能になります。これにより、より成長した段階の有望なスタートアップとも手を取れるようになりました。
「世界を感動で満たす」ソニーが定義するパーパスと未来への責任
吉田社長は2019年01月、ソニーの存在意義(パーパス)を「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」と定義しました。このシンプルな言葉の裏には、戦後から70年以上続く組織を新陳代謝させ、次の世代へ「より良いソニー」を引き継ぎたいという強い決意が込められています。単なる利益追求ではなく、社会にどう貢献するかを原点に置いているのです。
2019年08月17日の土曜日、暑い日差しの中でプログラミング教材を手に取る子どもたちを、吉田社長が柔和な表情で見守っていた姿が印象的でした。かつて財務責任者(CFO)として「眉間のしわ」がトレードマークだった彼が、未来のクリエイター育成に情熱を注ぐ姿からは、数字だけでは測れない「企業文化の再生」への本気度が伝わってきます。
創業世代が去り、業績の乱高下に苦しんだ20年という長いトンネルを、ソニーはようやく抜け出しました。しかし、真の勝負はここからです。自社の殻に閉じこもらず、外部の知恵を取り入れながら革新的な種を育て続けられるか。この長期的なビジョンが実を結んだとき、私たちはこれまで体験したことのない「新しい感動」に出会えるに違いありません。
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