2019年09月19日現在、世界最大の自動車市場である中国が大きな転換点を迎えています。かつて「中国のデトロイト」と称えられた重慶市を中心に、多くの自動車メーカーが深刻な経営難に直面しているのです。主要メーカーの工場稼働率は2018年に平均で70%を割り込み、過剰な設備投資が裏目に出る形となりました。
特に米フォード・モーターや仏グループPSAといった欧米勢の苦戦が目立ちます。フォードの合弁会社では、2018年の稼働率がわずか24%まで沈み込み、2019年上半期の販売台数も前年比で半減するという危機的な状況です。現場では一時帰休による実質的な人員削減が進んでおり、かつての活気は影を潜めています。
重慶市政府による異例の救済措置と「雇用守護」の光景
こうした事態を受け、重慶市政府は2019年08月上旬、経営難に陥った企業への支援策を発表しました。長安フォードに対しては約20億円もの資金を拠出し、雇用維持を条件に社会保険料の一部を払い戻すという異例の措置を講じています。式典で支援額が記された看板を掲げる担当者の姿は、今の苦境を象徴しているかのようです。
SNS上では「あのフォードがここまで落ち込むとは」「重慶の勢いが止まった」といった驚きの声が広がっています。一方で、政府が民間企業の救済に乗り出す姿勢に対し、根本的な解決にならないのではないかという冷ややかな視線も少なくありません。市場原理を超えた支援が、かえって淘汰を遅らせる懸念も拭いきれないでしょう。
ここで「稼働率」という言葉を整理しておきましょう。これは工場の生産能力に対して、実際にどれだけ製造したかを示す指標です。一般的に70%を下回ると採算ラインを維持するのが難しくなり、設備過剰とみなされます。現在の中国市場は、まさにこの「危険水域」に多くの企業が足を踏み入れている状態なのです。
明暗を分ける「日系ブランド」の底力と独州勢の躍進
市場全体が冷え込む中で、驚異的な粘りを見せているのが日系メーカーです。トヨタ、ホンダ、日産の3社は、2019年に入っても稼働率100%以上というフル操業を継続しています。中国市場が28年ぶりに前年割れを記録する逆風下でも、日本車の燃費性能や高いブランド力に対する消費者の信頼は揺らいでいません。
また、富裕層の購買意欲は衰えておらず、独ダイムラーやBMWといった高級車メーカーもフル稼働の状態にあります。つまり、中国市場は「売れない」のではなく「選ばれる車とそうでない車の格差」が極端に広がっているのです。この「二極化」こそが、現在の中国自動車業界を読み解く最大のキーワードと言えるでしょう。
私は、この現状は「質の伴わない拡大路線の終焉」だと考えています。安易な増産に頼ってきたメーカーが淘汰され、技術力と信頼を持つ日本勢が生き残るのは必然の流れではないでしょうか。中国政府が2019年01月から工場の新設規制を強化したことも、健全な市場への自浄作用として評価すべき一歩だと感じます。
今後の焦点は、余剰人員や設備の受け皿です。不振に喘ぐ神竜汽車の従業員が、ライドシェア最大手「滴滴出行(ディディ)」の運転手として生計を立てているという現実は、産業構造の激変を物語っています。製造からサービスへ、人の流れがどう変わるのか。この巨大市場の動向から、今後も目が離せません。
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