2019年09月24日、日産自動車のトップを務めてきた西川広人氏が、役員報酬の不正受領問題をきっかけにその座を退くこととなりました。社外取締役が主導する形で辞任が決定したことは、一見すると企業の統治体制である「ガバナンス」が機能し始めた一歩のように映ります。しかし、今回の決断において最も懸念されるべき点は、西川氏の取締役としての法的責任が非常に曖昧なまま処理されてしまったことでしょう。
日産の取締役会は、今回の騒動を「事務局側のミス」と結論づけ、西川氏本人が不正を認識していなかったとして法的責任を問わない方針を示しました。これは経営統合を強く迫るルノーに対して隙を見せないための、早期幕引きを図った政治的な判断だと言わざるを得ません。SNS上でも「ゴーン氏と何が違うのか」「身内に甘すぎる」といった厳しい声が相次いでおり、不透明な決着に対する不信感が急速に広がっている様子が伺えます。
しかし、社内調査書を精査すれば、西川氏自らが報酬の増額を要求し、株価連動報酬であるSAR(ストック・アプリシエーション・ライト)の行使日が変更された事実を把握していたのは明白です。SARとは、自社の株価が上昇した分だけ現金を報酬として受け取れる仕組みですが、行使日を意図的にずらして利益を水増しする行為は、カルロス・ゴーン元会長が問われた罪状と本質的に変わらないのではないでしょうか。
特別背任の疑いと突き付けられる株主の審判
本来であれば、こうした行為は会社法における「特別背任」や金融商品取引法違反に抵触する重大な懸念を含んでいます。特別背任とは、役員が自己の利益を図るために会社に損害を与える罪のことですが、取締役会でこの点が真剣に議論された形跡は見当たりません。このまま2020年の株主総会を迎え、西川氏が巨額の退職慰労金を手にして退任することになれば、納得できない株主たちが黙って見過ごすことは考えにくいでしょう。
会計評論家の細野祐二氏は、今後「株主代表訴訟」が提起され、ゴーン氏への厳しい対応との矛盾が法廷で徹底的に追及されるだろうと予測しています。株主代表訴訟とは、会社が役員の責任を追及しない場合に、株主が会社に代わって役員の賠償責任を問う裁判です。日産は今年から欧米型の委員会設置会社へと移行しましたが、その真価が問われるのは、身内の「ウミ」をどこまで自浄作用によって出し切れるかにかかっています。
編集部としては、日産が真の意味で再建を目指すならば、監査委員会が外部の専門家を交えて西川氏の法的責任を再評価すべきだと考えます。場当たり的な幕引きは、将来的にさらに大きな禍根を残す結果になりかねません。世界に冠たる技術を持つ日産だからこそ、透明性の高い議論を通じて信頼を回復してほしいと願っています。果たして日産は、過去の因縁を断ち切り、新たな時代へと踏み出せるのでしょうか。
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