入学、人事異動、転居など、新しい環境での生活が本格的にスタートする4月から2ヶ月が経過しました。この時期になると、なんだかやる気が出ない、毎日がつまらないと感じる方も少なくありません。これはいわゆる「五月病」や「六月病」といった言葉で表現される状態ですが、実はこれらは正式な医学的な病名ではないのです。しかし、新しい環境に馴染もうとする過程で心身のバランスを崩し、日常生活に支障をきたしてしまう状態は、精神医学においては**「適応障害」という診断名で呼ばれることがあります。これはうつ病ほど深刻な状態ではないものの、見過ごせない心と体の不調であると言えるでしょう。
一般的に、人間が新しい環境に順応するには約3ヶ月の期間が必要だと考えられています。ですから、4月に大きな変化を経験した方は、ちょうど6月末くらいまでは、その環境に適応するためのエネルギーを費やしている期間だと認識するのが適切でしょう。この「適応」のプロセスでは、私たちは意識的・無意識的に周囲にアンテナを張り巡らせ、大量の新しい情報を収集しています。やがて時間が経過するにつれて、何に注力すべきか、何はそこまで気にしなくても良いか、といった情報の重要度を分別できるようになります。この分別によって、徐々に心と体のエネルギーを節約する「省エネ」が可能になり、新しい環境に馴染んでいくことができるのです。つまり、適応とは、この先の見通しがなんとなく立てられるようになった状態を指すと言えるでしょう。
しかし、この適応の過程において、環境の変化がその人が持つ「容量」、つまり変化やストレスに対処できる心身の許容量を超えてしまうと、心身の不調をきたしてしまいます。要因は大きく分けて二つ考えられます。一つは、環境の変化によって入ってくる情報量が単純に多すぎるという状況です。例えば、新しい仕事、引っ越し、人間関係の変化など、いくつもの変化が同時に重なっている場合に、この情報過多の状態は起きやすくなります。もう一つは、ご自身の容量そのものが少ない、つまり元々環境の変化やストレスにあまり強くないというケースです。ご自身がどちらの要因によるリスクを抱えているのかを事前に知っておくことで、早めの対策を意識することができるでしょう。
さて、適応期間中に自分の容量を超えそうだと早めに気付くには、心身のエネルギー充足機能に注目するのが有効です。私たちのエネルギーを回復させる方法は、基本的に「食う」「寝る」「遊ぶ」の3つに集約されます。もし、大好物がおいしく感じられなくなったり、夜なかなか寝つけなかったり、あるいは考え事のせいで途中で目が覚めてしまったり、今まで楽しめていた趣味も楽しめないといった感覚が1週間以上続くようなら、エネルギーを充足させる機能が低下している可能性が高いと言えます。こうしたサインを見逃さず、ご自身の心身の状態に耳を傾けることが大切です。
もしエネルギー充足機能の低下を感じたら、環境に適応するために放出しているエネルギーを意識的に減らす対策をとりましょう。目の前にある課題やストレス要因を、「それは本当に重要か?」、そして「それは今の自分に変えられることか?」という二つの視点で整理してみるのです。重要度が低かったり、今すぐにはどうしようもないことについては、時には「今はやり過ごす**」という割り切った対処法も非常に有効なセルフケアとなり得ます。この神田東クリニック院長である高野知樹氏の提言は、多くの新生活に挑む人々にとって、心を軽くする重要なヒントとなるでしょう。
この記事が公開された2019年6月15日当時、SNS上でもこの時期の体調不良に関する投稿が多く見受けられました。「なんだか最近だるいと思っていたけど、適応障害の知識を知って安心した」「無理せず自分を休ませることも大事だと気付かされた」といった声や、「まずは食欲と睡眠をチェックしてみよう」といった具体的なセルフケアを試みる姿勢が見られました。多くの読者は、この記事で提供された**「適応」と「容量」という分かりやすい概念を通じて、自身の不調を客観的に捉えるヒントを得ることができたようです。新しい環境でのチャレンジは素晴らしいものですが、心身の健康という土台があってこそ継続できるものですから、この知識を活かしてご自身の「心のエンジン」**を大切にしていただきたいと思います。
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