【レスリング】伊調馨が崖っぷちから逆転!世界選手権代表に王手——全日本選抜で示した「五輪4連覇」の勝負強さ

2019年6月16日、全日本選抜レスリング選手権大会の女子57キロ級準決勝で、オリンピック4連覇という偉業を誇る伊調馨選手が、紙一重の激闘を制し、決勝進出を果たしました。これにより、彼女は世界選手権の代表切符獲得へ大きく前進したことになります。しかし、その内容は決して楽なものではなく、勝利への道のりは極めて険しいものでした。

準決勝では、相手の南條選手に試合の主導権を握られる展開となりました。特に、後半戦の中盤を過ぎたあたりで、南條選手の片足タックル、これは相手の脚を取って倒しにかかるレスリングの基本的な攻撃技ですが、これを受け、一気に2点を先取されてしまうという土俵際に追い込まれてしまいます。この瞬間、会場は一時、静まり返ったことでしょう。敗戦の二文字が脳裏をよぎるほどの危機的な状況だったのです。

しかし、ここで伊調選手は、並々ならぬ「勝負強さ」を発揮されました。五輪4連覇という前人未到の記録を打ち立ててきたレジェンドの底力が爆発したと言って過言ではありません。相手の追撃を巧みに凌ぐだけでなく、逆に自身の体を「めくり返す」ような、驚異的な動きで2点を奪い返し、試合を振り出しに戻しました。これは、相手の攻めを利用して自分の体勢を入れ替え、ポイントを奪う高等技術の表れです。

最終的に、試合は3対3の同点で終了したのですが、レスリングの規定では「最後に得点した選手が勝者となる」というルール(ビッグポイントや失点の少なさなど、他の条件が優先される場合もありますが、本試合ではこの規定が適用されたものと思われます)により、伊調選手が辛くも勝利を収める結果となりました。まさに、薄氷を踏むような勝利だったと言えるでしょう。伊調選手は、決勝に備えた体重管理を理由に試合後の取材エリアには姿を見せませんでしたが、その勝利がギリギリであったことは、所属先の大橋監督が「内容的には厳しい」と率直にコメントしたことからも明らかです。

SNS上でも、この試合については大きな反響を呼んでいます。「ヒヤヒヤしたけど、やっぱり伊調さんは持ってる!」「さすがの勝負強さ。あの場面から逆転できるのは規格外」「内容はどうであれ、勝ち切るのが一流の証」といったように、追い込まれてからの逆転劇と、最後まで諦めない精神力に対して、称賛の声が多数寄せられています。一方で、「今日の動きだと、決勝は不安」「全盛期に比べると守勢に回る場面が増えた」など、試合内容に対する厳しい意見も見受けられますが、それこそが偉大な選手ゆえの注目度の高さを物語っています。

実は、伊調選手は同年4月のアジア選手権でも3位に終わっており、今大会の準決勝でも、彼女らしくない守勢に回る場面が散見されました。これは、伊調選手がこれまで築き上げてきた鉄壁のディフェンスと攻撃のリズムが、少しずつ崩れてきているのではないか、という懸念を抱かせます。監督も「この状態で接戦をいかにものにするか」と頭を悩ませており、万全の状態ではないことを示唆しているのでしょう。

そして、16日の決勝戦では、リオデジャネイロオリンピックの金メダリストである川井梨紗子選手との「世紀の再戦」が控えています。この両者は、昨年12月の全日本選手権決勝でも、まさに死闘と呼べる大接戦を繰り広げています。川井選手は、若さと勢いを兼ね備えた現在の女子レスリング界を牽引するトップランナーの一人です。今回の決勝も、一筋縄ではいかない激しい攻防が予想されます。勝者が世界選手権代表に決定するこの大一番、伊調選手が「レジェンドの意地」を見せつけることができるのか、それとも川井選手が「新女王」の座を確固たるものにするのか、すべてのレスリングファンが注目しています。

個人的な意見ですが、伊調選手の「勝負強さ」は、単なる技術論を超えた、絶対的な自信と経験に裏打ちされたものです。内容が厳しい中でも、最後の最後でポイントを奪い取るその能力は、まさに天才的と言えるでしょう。しかし、アスリートである以上、時の流れは公平です。万全でないと監督が認める中で、どう川井選手の勢いを凌駕するのか、その采配にも注目したいところです。ともあれ、この一戦は、日本の女子レスリングの未来を占う、歴史的な一戦になることは間違いないでしょう。

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