宝塚歌劇団星組のトップスターとして絶大な人気を誇る紅ゆずるさんが、ついにその輝かしいキャリアの集大成となる退団公演に臨んでいます。2019年09月25日現在、東京宝塚劇場で上演されている『GOD OF STARS-食聖-』は、彼女の持ち味である卓越したコメディーセンスがこれでもかと詰め込まれた、至高のエンターテインメント作品に仕上がりました。シンガポールの屋台街を舞台に繰り広げられるドタバタ劇は、観客の笑いと涙を誘い、劇場の熱気は最高潮に達しています。
物語の主人公は、アジア全域でその名を轟かせる天才料理人、ホン・シンシンです。紅さん演じるホンは、並外れた料理の腕を持ちながらも、あまりの傲慢不遜な態度ゆえに経営陣から見放され、一夜にしてすべてを失うという波乱の展開から始まります。トップスターが「失脚」というどん底の状態を演じるギャップは非常に新鮮であり、SNS上でも「これほどコメディーを極めたトップスターはいない」「紅さんの表情筋が天才的すぎる」と、ファンからの絶賛コメントが相次いで投稿されました。
地位も名誉も、そして財産までも奪われたホンが流れ着いたのは、活気あふれる下町の屋台街でした。そこで出会ったのが、星組トップ娘役の綺咲愛里さんが演じる、勝気で情に厚いアイリーンです。彼女が切り盛りする大衆食堂に救われたホンは、かつてのプライドをかなぐり捨て、食堂の経営難を救うために立ち上がります。彼が再起をかけて挑むのは、世界一の料理人を決定する「食聖コンテスト」。この再起をかけた挑戦が、物語の大きな見どころとなっています。
本作において重要なキーワードとなる「食聖(しょくせい)」とは、料理の技術だけでなく、食べる者を幸福にする精神性までも極めた、まさに「食の聖者」を指す造語です。一般的に、宝塚歌劇といえば華麗な王子様や悲劇のヒーローが王道とされますが、紅さんはあえて「笑い」を正面から追求しました。これは彼女が歩んできたスターとしての独自の道筋を象徴しており、編集者の私としても、美しさの中に親しみやすさを同居させた彼女のスタイルこそが、現代の宝塚に新たな風を吹き込んだと感じています。
舞台上では、紅さんと綺咲さんの息の合ったコンビネーションが光り、まさに「パッショネイト」という言葉がふさわしいエネルギーが溢れています。退団という寂しさを吹き飛ばすような明るい作風は、彼女からファンへの最後にして最高の贈り物といえるでしょう。2019年09月25日の公演を観劇した人々からは、「寂しいはずなのに、笑いすぎて幸せな気持ちで劇場を後にした」という声が多く聞かれます。最後まで自分らしく、笑顔で駆け抜けようとする彼女の姿から目が離せません。
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