2019年09月26日の米国株式市場は、トランプ大統領の弾劾問題を巡る先行きの不透明感から反落する展開となりました。しかし、その一方で米中貿易協議の進展を期待する買いも入り、相場は激しく一進一退を繰り返しています。こうした混沌とした状況下で、ひときわ大きな注目を集めたのが、世界的なファストフードの巨人であるマクドナルドの動向でしょう。
同社は、代替肉メーカーのビヨンド・ミート社が手掛けるパティを使用したハンバーガーを、カナダの一部店舗で試験販売すると発表しました。このニュースを受け、ビヨンド株は急騰し、マクドナルドの株価も好意的に受け止められています。最大手が代替肉の導入に踏み切った事実は、単なる流行を超え、気候変動リスクを注視する投資家たちにとって、大きな時代の転換点として意識されたはずです。
米国で代替肉への関心が高まっている理由は、健康志向だけではありません。従来の牛肉生産には、膨大な水や飼料が必要であり、それが地球環境への過度な負担になっているという認識が浸透しつつあります。SNS上でも「ついにマックが動いた」「環境負荷を考えるなら賢い選択だ」といった声が相次いでおり、消費者の価値観が「美味しさ」だけでなく「持続可能性」へとシフトしていることが伺えるでしょう。
世界を動かす「ESG投資」の波と日本の存在感
折しも2019年09月の今週は、ニューヨークの国連本部で「気候行動サミット」が開催されています。これに合わせ、世界50カ国の首脳や企業のトップが集結する「グローバル・ビジネス・フォーラム」も行われました。ここで交わされた共通認識は、気候変動はもはや「将来の懸念」ではなく、「今まさに直面している経済的危機」であるという非常に切実なものです。
こうした国際会議の中で、ひときわ脚光を浴びたのが、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)で最高投資責任者を務める水野弘道氏です。100兆円規模の巨額資産を動かすGPIFが、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)を重視する「ESG投資」を加速させている事実は、世界の金融市場に極めて大きなインパクトを与えています。
ESG投資とは、財務情報だけでなく、環境への配慮や社会貢献度を評価基準に加える投資手法を指します。個人的な見解を述べれば、これからの企業経営において環境対策を疎かにすることは、将来的な成長を自ら放棄するに等しい行為と言えるでしょう。投資家が企業の「良識」を厳しくチェックする時代において、GPIFのような巨大なクジラが動く意味は、計り知れないほど重いのです。
政治の思惑と乖離する市場の現実
一方で、トランプ政権下の米国は複雑な立場に置かれています。大統領は石炭業界の雇用を守るため、地球温暖化に対して懐疑的な姿勢を崩していません。しかし、保守的な論調で知られるFOXニュースでさえも、石炭消費が41年ぶりの低水準に沈み、補助金なしでは市場経済で生き残れない現状を報じ始めました。つまり、政治の意思とは裏腹に、経済の論理は着実に脱炭素へと向かっているのです。
さらに深刻なのは、地方債市場への影響でしょう。米経済誌バロンズが指摘するように、ハリケーンや山火事といった自然災害の激甚化が、地方自治体の財務を直接的に圧迫し始めています。これまで安全な投資先とされてきた地方債ですが、気候変動による災害復旧コストが増大すれば、その安全性すら揺らぎかねません。フロリダ州が金利の前払いを表明せざるを得ない状況は、まさに危機が足元まで迫っている証拠です。
短期的には規制緩和や保護政策が特定の業界を潤すかもしれませんが、長期的な視点に立てば、気候変動リスクを無視し続けることは経済全体に壊滅的な打撃を与えかねません。機関投資家たちが、この問題を運用上の最大リスクと位置づけているのは、至極当然の判断と言えるでしょう。私たちは今、経済の常識が「環境との共生」へと根本から書き換えられる瞬間に立ち会っているのです。
コメント