日本が誇る農林水産物や加工食品を、もっと積極的に世界へ送り出すための、政府の新しい総合的な対策が発表されました。これは、輸出を目指す生産者や食品企業の皆様にとって、大きな追い風となるでしょう。これまで複数の省庁にまたがっていた煩雑な手続きを整理し、海外市場の開拓をスムーズにするための改革案です。具体的には、輸出相手国が求める安全審査の業務を、厚生労働省などから農林水産省に新設される組織へと移管し、同時に輸入規制の撤廃を促す国際交渉も一本化される見込みです。この手続きを簡素化し、所要時間を短縮する取り組みは、日本の「食」の国際競争力を高める上で非常に画期的であり、高く評価できるものです。
「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されて以来、日本食品に対する海外の関心と信頼は高まり続けています。しかし、食品を輸出する際には、食肉処理施設が「HACCP(ハサップ)」と呼ばれる国際的な衛生管理基準の認証を得ているか、あるいは安全性が確認された漁場で採られた貝であるかなど、国・地域ごとに異なる厳しい証明が求められます。このHACCPとは、「Hazard Analysis and Critical Control Point」の略で、食品製造の全工程で、特に危害の発生を防ぐために重要な工程を継続的に管理する手法を指します。安全性を担保する上で不可欠なプロセスですが、従来の審査体制では、この証明手続きが迅速とは言えず、生産者の皆様の輸出への意欲を削いでしまう事態も発生していました。
例えば、高級食材として名高い「神戸ビーフ」などの牛肉を米国や欧州へ輸出するために、兵庫県に新設された食肉センターは、施設の完成から国際基準であるHACCPの認定を取得するまでに、なんと2年以上の月日を要しました。その間、輸出用の牛肉は遠く離れた鹿児島県の認定施設まで送る必要があったといいます。これでは、生産現場の努力が報われにくくなってしまいますよね。こうした実態を踏まえ、政府は輸出に必須となる衛生検査や各種手続きを一元化し、農林水産省内に2020年春を目処に新設される組織に集約する方針を打ち出しました。加えて、国際基準に対応できる民間の検査機関を増やし、その積極的な活用も視野に入れています。世界的に「食の安全」への関心は一層高まっており、輸出国に求められる審査基準はますます厳格化しています。国や地域によって異なり、常に変化し続ける要求に迅速に対応し、輸出を拡大するためには、このような一元的な組織がまさに必要不可欠だと考えられるのです。
この改革の柱の一つとして、新設組織は、福島県産の水産物などをはじめとして、未だに日本食品の輸入を規制している国や地域、例えば韓国などとの間で、その規制の解消に向けた交渉の中心的役割を担うことになります。輸出額を見てみますと、農林水産物や食品の輸出は昨年、9,068億円に達し、6年連続で増加傾向にあります。これは素晴らしい成果と言えるでしょう。しかしながら、今年の達成を目指す「1兆円」という輸出目標も、世界で活躍する農業先進国と比較すると、まだまだ大きな数字とは言えません。
例えば、国土が日本の九州とほぼ同じ広さしかないオランダは、2015年時点で800億ドルを超える輸出額を達成しています。オランダは、地域の食材と人材、そして技術開発を巧みに結びつけ、輸出食品の付加価値を高める戦略に成功しており、残念ながら日本の現状とはまだ大きな差があると言わざるを得ません。SNS上でも、「手続きが煩雑で輸出を諦めていた」「やっと国が動いてくれた」といった、今回の政府の対策を歓迎しつつも、これまでの遅れを指摘する声が多く見受けられました。国民の期待は非常に高いと言えるでしょう。
ですから、輸出促進のための体制を整備するのと並行して、「日本の農林水産物をどのような形で、どのようなターゲット層に売り込むか」という戦略策定が、極めて重要になってくるでしょう。地域独自のブランドや、独自に開発された新しい品種といった日本の「知的財産」を増やし、それらを海外でしっかりと守るための体制づくりも、同時に急ぐべきだと強く考えます。この総合対策は、日本の「食」が世界市場で真価を発揮し、その魅力を最大限に届けるための第一歩となるでしょう。安全性の信頼を維持しつつ、この改革をスピード感をもって実現させていくことが、今の日本に求められているのです。
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