投資家たちの熱い視線が、中央銀行による「金融緩和」から政府による「財政政策」へと劇的に移り変わっています。2019年9月27日現在のマーケットでは、これまでの低金利を前提とした投資戦略が大きな転換点を迎えているようです。これまで市場を牽引してきた不動産株に一服感が出る一方で、景気回復への期待から海運や銀行といった銘柄に資金が流れ込んでいます。
世界的な金利低下の流れが落ち着きを見せ始めたことで、運用担当者の間では「政策頼み」の構図がより鮮明になってきました。三菱UFJ国際投信の小山洋美氏は、期待の主役が利下げから財政出動へ交代したと分析しています。金利の上昇局面を見据え、割安感があり業績改善が見込める銀行株の有望性を強調しており、投資家たちのマインドは明らかに攻めの姿勢に転じているのです。
2019年9月26日の日経平均株価は、前日比28円高の2万2048円で取引を終えました。わずかな上昇ではありますが、その背景には「世界的な景気対策」への強い渇望が隠されています。特に注目を集めているのがドイツの動向です。農林中金全共連アセットマネジメントの山本健豪氏は、景気改善の起爆剤として、これまで慎重姿勢を貫いてきたドイツの財政出動に大きな期待を寄せています。
限界が見え始めた金融政策と「債券バブル」の終焉
なぜ今、財政出動なのでしょうか。その理由は、2019年9月中旬までに欧米日の主要な金融政策が出揃い、その効果に限界が見え始めたことにあります。欧州中央銀行(ECB)は量的緩和を再開し、米連邦準備理事会(FRB)も利下げに踏み切りましたが、市場の反応は驚くほど鈍いものでした。もはや金利を操作するだけでは、景気を劇的に押し上げる力は残されていないのかもしれません。
こうした状況下で、ECBのドラギ総裁が「財政に余裕がある国は動くべきだ」と発言したことは、市場に強いインパクトを与えました。米長期金利も2019年8月の1.4%台から1.8%台へと反発しており、コモンズ投信の伊井哲朗社長は、行き過ぎた金利低下による「債券バブル」が一段落したと指摘します。これを受けて、低金利の恩恵を受けてきた不動産や自動車株から資金を引き揚げる動きが加速しています。
ここで「財政出動」という言葉を整理しておきましょう。これは国が公共事業を増やしたり、減税を行ったりして直接的に経済を刺激する手法を指します。一方の「金融政策」は、中央銀行が金利を操作して世の中のお金の流れを調整することです。今はまさに、中央銀行の「魔法」が効きにくくなったため、政府が直接サイフを開くことを市場が求めている状態だと言えるでしょう。
SNS上でもこの変化は敏感に察知されています。「利下げ期待で買っていた時期は終わった」「次はドイツや中国のインフラ投資がテーマになる」といった声が投資家アカウントから次々と発信されています。2019年9月の騰落率を見ても、海運株が15%高、銀行株が12%高と急騰しており、三菱地所などの不動産株が4%高に留まっていることからも、物色対象の変化は一目瞭然です。
バンクオブアメリカ・メリルリンチが2019年9月に実施した調査でも、投資家が最も期待する政策の第1位は「ドイツの財政刺激策」でした。これは「米国の利下げ」を上回る結果であり、世界中のマネーが政府の決断を待っていることを示しています。ドイツが重い腰を上げれば、連鎖的に中国や米国でも積極的な財政運営が広がるとのシナリオが、現在の株価を支える大きな柱となっています。
筆者の視点としては、現在の市場は期待が先行しすぎている危うさを感じざるを得ません。ドイツが実際に景気対策へ舵を切るのは、雇用環境が悪化する2019年末以降になるとの予測もあり、期待と現実のタイムラグが波乱を呼ぶ可能性もあります。しかし、官民一体となった景気浮揚策へのシフトは、停滞する世界経済に新たな息吹を吹き込む唯一の道であり、この「政策シフト」の成否が今後の運命を握るでしょう。
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