2019年6月17日、コンビニエンスストアのフランチャイズ(FC)システムにおける、ある根深い問題が再びクローズアップされています。それは、24時間営業の継続が加盟店オーナーの大きな負担となっていることに加え、消費期限が迫った弁当などの食品廃棄による損失、通称「廃棄損」を巡る問題です。この廃棄損の負担のあり方と、それに伴う値引き販売の制限は、オーナーの経営を圧迫する「三大コスト」の一つとして、人件費、光熱費と並び重くのしかかっています。
この問題に関して、さかのぼること2009年、公正取引委員会(公取委)が、ある重要な判断を下しました。大手コンビニエンスストアの本部が、弁当などの見切り販売、つまり値引き販売を不当に制限していたとして、セブン―イレブン・ジャパンに対して排除措置命令を出したのです。これは、本部が事実上、統一的な小売価格を加盟店に強要していたと公取委が判断し、独占禁止法における優越的地位の濫用に該当すると適用されたものです。
この値引き販売を巡る本部と加盟店の関係を解き明かす鍵は、FC契約における「ロイヤルティー」の仕組みにある、と専門家は指摘します。ロイヤルティーとは、本部が商品やサービス、ブランドを提供する代わりに、加盟店から受け取る経営指導料のことです。一般的に、このロイヤルティーは、加盟店の売上総利益に一定の比率をかけて算出されます。売上総利益とは、売上高から売上原価を差し引いた利益のことで、これがコンビニ経営の基本的な収益源となります。
理想としては、商品がすべて売り切れた場合、本部と加盟店の間に利害の対立は生じにくいでしょう。しかし、問題となるのは商品が売れ残ってしまった場合です。売れ残った食品は廃棄され、廃棄損が発生します。この損失の負担構造に、現在の問題が集約されていると言えます。多くの場合、この損失の大部分は加盟店側が引き受けることになり、本部の負担は非常に小さい構造になっているのです。
売れ残りが増えれば増えるほど、廃棄損は膨らみ、加盟店の負担は重くなります。そこで加盟店が損失を少しでも抑えようと値引き販売を行うと、今度は売上総利益が減ってしまうため、ロイヤルティーの算定基準が下がり、結果として本部の取り分も小さくなります。このように、廃棄損が出た途端、本部と加盟店の間の利害は一致しなくなってしまうのです。
現場のオーナーの声は切実です。群馬県の53歳の加盟店オーナーは、「24時間営業に加え、廃棄損の負担も非常に大きい」とその苦悩を明かしています。公取委による値引き販売に対する命令から約10年が経過した現在でも、本部と加盟店オーナーを巡る力関係は大きく変わっておらず、加盟店側が弱い立場に置かれ続けているのが現状ではないでしょうか。
本来、FC契約下であっても、加盟店には自由に小売価格を決める権利があるはずです。それにもかかわらず、多くの加盟店オーナーが値引き販売に踏み切れないのは、本部に契約更新を拒否されることを恐れるからです。この本部の「優越的地位」を利用したとも取れる行為は、健全なビジネス環境とは言えません。
私見として、この問題は単なる契約上の問題ではなく、日本のコンビニエンスストアシステム全体のあり方に関わる、極めて重要な経営課題だと思います。弁護士の中村昌典氏は、「24時間営業問題をきっかけに、現状のシステムを根本的に見直す必要がある」と強調しています。SNS上でも、廃棄ロス問題やオーナーの過重労働に対する同情や、本部側の姿勢を批判する声が多く見受けられ、消費者からの関心も高まっています。
本部と加盟店は、共にブランドを支えるパートナーであるべきです。しかし、現状のロイヤルティーや廃棄損の負担の仕組みでは、どうしても本部側の利益が優先され、加盟店に過度なリスクが集中しているように見受けられます。今後の健全なFC経営のためには、廃棄損の負担のあり方、値引き販売に関するルールの透明化、そしてオーナーの自由な経営判断を尊重する仕組みへの抜本的な転換が、強く求められていると言えるでしょう。
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