東南アジアの熱気あふれる路上に、静かでクリーンな新風が吹き込もうとしています。タイのスタートアップ企業である「イートラン(ETRAN)」が、同社にとって初となる記念すべき電動バイクの発売を発表しました。まずは2019年9月27日時点で300台の先行販売を開始し、翌年となる2020年には本格的な量産体制へと移行する計画を掲げています。
急速な経済発展を遂げるタイでは、排ガスによる大気汚染が社会問題となっており、環境への配慮がかつてないほど高まっています。こうした背景を受け、イートランは今後10年間で累計20万台という壮大な販売目標を打ち出しました。IT系が主流のスタートアップ界隈において、同社のような「モノづくり系」の挑戦は非常に珍しく、現地の産業界からも熱い視線が注がれているのです。
2015年の創業以来、地道な開発を続けてきた同社を支えるのは、強力なパートナーシップに他なりません。タイ国営石油公社(PTT)や、大手自動車部品メーカーのサクンCイノベーションと手を取り合い、技術の粋を集結させました。大企業のインフラとスタートアップの機動力が見事に融合し、ついに実用的なプロダクトとして形になったことは、タイの製造業における新たな希望と言えるでしょう。
驚異のスペックとインフラ整備が導く「ガソリン車超え」の利便性
気になる新型バイクの性能ですが、最高時速は130キロメートルに達し、1回のフル充電で最大180キロメートルの走行が可能となっています。価格は15万バーツ(日本円で約52万円)と設定されました。さらに、専用の充電機器を導入すれば自宅でのエネルギー補給も容易で、わずか2時間ほどでバッテリーを100%の状態にまで回復させることができる利便性を備えています。
電動車両の普及に欠かせない「充電スポット」についても、抜かりない準備が進められています。イートランは全国展開するPTTのガソリンスタンド網をフル活用し、2020年3月頃までを目安にバンコク周辺へ約100カ所のステーションを設置する方針です。SNS上でも「これなら航続距離の不安なく乗れる」「デザインも洗練されている」といった、期待に満ちた反響が数多く寄せられました。
筆者としては、この取り組みが単なるバイクの販売に留まらず、タイのエネルギー構造そのものを変える可能性を秘めていると感じています。ガソリンスタンドが「充電拠点」へと姿を変えていく様子は、まさに時代の転換点です。課題となる車両価格の高さも、量産によるコストダウンが進めば、一般市民にとっての有力な選択肢として不動の地位を築くことになるはずでしょう。
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