【AI時代の必須スキル】読解力と論理力こそ生き残りの鍵!国立情報学研究所・新井紀子教授が提言する「意味を捉える力」の磨き方

2019年6月17日、人工知能(AI)の進化が私たちの生活や仕事に与える影響について、多くの人が強い関心を寄せています。特に、学生の間では「AIに自分の仕事が奪われるのではないか」という将来への不安が広がっている状況です。こうした懸念に対して、長年にわたりこの問題に警鐘を鳴らしてきた数学者であり、国立情報学研究所教授の新井紀子氏が、AI時代を生き抜くための具体的な対策を解説してくださいました。新井教授は、AIが人類を支配する「シンギュラリティー(技術特異点)」のような劇的な事態は起こらないとしながらも、特定の頭脳労働がデジタル化され、機械に置き換わることは避けられないと断言しています。

特に、数値データの処理を得意とするデジタルの特性から、銀行、証券、保険といった金融業界や、ホワイトカラーの比率が高い物販の営業部門などへの影響は非常に大きいと指摘されています。さらに、理系の分野も例外ではありません。生産性の低いプログラミング企業は淘汰される運命にあるでしょう。新井教授は、これから2030年ごろまでの間に、デジタル化を前提とした「最適化」が進行し、多くの業態で再編が起こり、誰もがこの劇的な環境変化に巻き込まれるだろうと予測しています。

こうした先の見えない時代だからこそ、進路選びで「どの職業が安全か」と考えるのは最も意味がない選択だといえるでしょう。例えば、「公務員なら大丈夫」「医師なら問題ない」といった考え方は、かえって危険な選択肢になりかねません。新井教授は、どのような状況下でも常に求められるのは「有能な人材」であると強調します。卒業した学部や特技に関係なく、基本的なスキルが高く、高い生産性を発揮できる人材こそが生き残ると述べているのです。

スポンサーリンク

AIと競合しないための「3つの基本スキル」

では、有能な人材とは具体的にどのような能力を備えているのでしょうか。新井教授は、その根幹となるのが「読解力」と「論理力」であると指摘します。そして、他者と協力して働く上で、適切な「コミュニケーション能力」さえあれば、どんな世の中になっても恐れることはないでしょう。この3つの基本スキルを身につけることができれば、機械との競争に打ち勝つことができるのです。なぜなら、機械は「意味」を理解することができないため、これらの能力を持つ人は労働市場で引く手あまたになるはずだからです。

一方で、現代社会では政府や企業、教育機関がAI人材の育成やプログラミング教育に注力していますが、新井教授は、こうした取り組みが必ずしも読解力などの基礎学力の向上につながっていない現状に警鐘を鳴らしています。先が見えないことへの不安から、学生も親も企業も、あれこれと手を広げ過ぎてしまい、かえって学習の基礎基本がおろそかになっているのではないでしょうか。その証拠に、2021年から導入される新センター試験(大学入学共通テスト)の国語記述式問題では、受験生の3割もの高校生が自己採点を正確に行えないという事態が明らかになっています。基礎基本が欠如した状態では、いくら多くのことに手を出しても、真の能力として身に付くことはないのです。

例えば、高度なプログラミングには、正確な仕様書を作成し、その仕様書通りに実装する力が最も必要です。これはつまり、「読解力」と「記述力」にほかなりません。さらに、AIを扱うプログラマーにとって不可欠なのは、確率、統計、行列、微積分といった数学の知識です。「数学は苦手だが、プログラミングを少し勉強した」程度のスキルでは、早晩、淘汰されてしまうでしょう。SNS上でも、「AIの進化は怖いけれど、プログラミングよりまず国語をしっかりやらないとダメということか」「結局、基礎学力がないと何を学んでも無駄ということだ」といった共感の声や、危機感を訴える意見が多く見受けられます。

「読むとは何か」の自覚なき読書好きの増加

新井教授がAI研究を通じて考案し、小学6年生から一部上場企業人まで7万人以上に実施した「リーディングスキルテスト」の結果は衝撃的です。多くの人が、事実について書かれた短い文章を正確に読めていないことが判明したのです。さらに深刻なのは、そうした基礎的な読解力が欠けていることについて、本人に自覚がないことです。読書が好きだと公言している人の中にも、実は短文を正確に理解できない人が非常に多いという実態が明らかになりました。

テストを受けた人々の多くが、「文章が読める」とはどういう状態なのか、その本質を理解できていません。中学に進学して数学が苦手になったという人の多くは、実際には数学の教科書の内容を読み取れていなかったというケースが少なくありません。多くの人が、「読むとは何か」を理解しないまま大学に進学し、20代を迎えているのが現状といえるでしょう。しかし、教科書や新聞、辞書などの文章を正確に読む力さえあれば、数学やプログラミングの教材も理解できるようになるため、プログラミング自体は独学で習得することが可能です。調査結果からも、教科書をきちんと読むことが学力の向上に直結することが明らかになっています。学習しても学力や生産性が伸びない最大の原因は、説明文を正確に読み取れないことにあるのです。

だからこそ、AIの台頭を恐れる前に、まず「読解力」を磨くことが最優先事項であると私は考えます。読解力が不足していると、業務でミスが生じやすくなり、結果として多忙になり、すべてが後手に回るという悪循環に陥ってしまうでしょう。そうした状況に陥る前に、まずは新聞の一つの記事を一字一句、集中して読み込む努力を始めるべきです。その文章がどういう意味を持つのかを考えながら、じっくりと文字を追う習慣をつけ、要約をノートに書き出すことも効果的でしょう。

大切なのは「自分の頭で考える」ことです。非効率だと感じても、その内容が腑(ふ)に落ちるまで深く読み込むことを続けてみてください。このような努力を1年間継続することができれば、きっと素晴らしい結果がもたらされるでしょう。こうした地道な努力を続けることさえできれば、AIを過度に恐れる必要はないはずだと新井教授は締めくくっています。一橋大学法学部を卒業後、米イリノイ大学大学院数学科で理学博士を取得し、「ロボットは東大に入れるか」プロジェクト(通称「東ロボ」)を指揮するなど、常に教育とAIの最前線に立つ新井教授の提言は、AI時代を生き抜くための真の羅針盤となるでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました