日本経済新聞社の発行する英文メディア『Nikkei Asian Review(NAR)』が、アジア太平洋地域で最も権威あるとされる二つの賞をW受賞するという快挙を成し遂げました。このメディアは、日本を含むアジア全域の最新ニュース、鋭い分析記事、そして識者による見解をウェブと紙媒体で提供しており、政治、経済、投資はもちろん、文化や生活といった幅広い分野をカバーしています。このたび、アジア出版者協会賞(SOPA賞)で4部門に入賞し、さらにアジア・メディア賞では初の金賞を獲得したのです。特にSOPA賞は2015年の初回応募から5年連続の受賞となり、その質の高さが継続的に評価されていることが証明されたと言えるでしょう。
まず、SOPA賞の主要部門である「スクープ部門」で見事に最優秀賞に輝いたのは、中国の半導体製造に関する特報でした。半導体は、スマートフォンやパソコンなどの電子機器に不可欠な「頭脳」とも言える電子部品です。この特報では、世界的な半導体設計大手である英アーム・ホールディングスが、中国での事業を現地企業などが過半数を出資する合弁会社に譲渡するという昨年5月の動きを捉えました。アーム社はソフトバンクグループ傘下にあり、米中間の技術覇権争いの渦中で大きな注目を集める企業です。この事業譲渡は、中国が外国企業への半導体調達の依存度を下げ、安全保障上の有利な立場を確立する上で大きな一歩となることを意味します。審査委員会は、この記事が「中国の半導体生産の動向と世界の技術変革を包括的に描いている」と高く評価しました。
✨NARのスクープ力を支える深掘り取材の結晶
さらに、『NAR』の取材力は「経済報道部門」でも最優秀賞を獲得しました。選ばれたのは、次世代情報技術や新エネルギー車などの製造業の高度化を目指す中国の国家戦略「中国製造2025」を巡る一連の報道です。この国家戦略は、中国が世界の産業界で主導的な地位を築くことを目指すもので、半導体や電気自動車(EV)、バイオテクノロジーなどの重要産業がターゲットになっています。3本の巻頭特集を通じて、中国が急ピッチで育成を進めるこれらの産業政策の実態が深く掘り下げられました。審査委員からは、「産業界でのグローバルリーダーを目指す中国の動向について、深く取材、分析している」との賛辞が贈られています。私見ですが、中国の動きはアジア全体の経済、さらには世界のサプライチェーン(供給網)に極めて大きな影響を及ぼすため、このような徹底した調査報道は、アジアを専門とするメディアとして最も重要な役割を果たしていると言えるのではないでしょうか。
「ニュース解説部門」でも最優秀賞を受賞したのは、日本における外国人労働者の受け入れ拡大に関する一連の記事です。これは、政府の政策の是非だけでなく、実際に日本で働く外国人労働者への取材に基づき、受け入れの実態や政策が抱える問題点を具体的な事例を交えて報じたものです。審査委員からは、「日本政府の受け入れ施策と同時に、外国人労働者の生活に焦点をあて、深い洞察と鮮明な構成で魅力的に描写した」と、その視点の多角性が高く評価されました。また、「雑誌デザイン部門」では、2018年6月11日~17日号の巻頭特集「IMAGINING A UNIFIED KOREA」(「南北統一」の姿を探る)が優秀賞を受賞し、イラストなどのレイアウトが魅力的であるとの評価を得ました。
👑アジア・メディア賞で初の金賞!ゴーン事件報道の衝撃
そして、『Nikkei Asian Review』は、世界新聞・ニュース発行者協会(WAN-IFRA)が主催する2019年アジア・メディア賞でも「ニュース報道部門」で初の金賞を受賞しました。WAN-IFRAは世界120カ国・地域以上の報道機関を代表する国際的な団体であり、この受賞は世界的な評価に他なりません。受賞対象となったのは、2018年12月3日~9日号の巻頭特集「After Ghosn(ゴーン氏退場、日産・ルノー連合の行方は)」です。
この特集は、2018年11月に日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告が東京地検特捜部に逮捕された事件を受けて制作されました。記事は、ゴーン元会長が日産に与えてきた影響を、彼が体制を確立した20年前からの歴史を概観しつつ詳細に分析しました。さらに、逮捕後の日産と仏ルノーの間で繰り広げられた複雑な攻防についても深く報じています。日本国内のみならず、世界中のビジネスと政治に大きな波紋を広げたこの大事件を、国際的な視点から、しかも事件直後にここまで包括的かつ詳細に報じられた点こそが、金賞受賞につながったと確信しています。アジア・メディア賞には55報道機関から合計350点の応募があり、その中でトップに選ばれたことは、NARの報道が持つ影響力の大きさを示しています。
今回のアジア出版社協会賞とアジア・メディア賞の同時受賞は、アジアの動向を英語で世界に伝える『Nikkei Asian Review』が、その卓越した報道の質、独自の分析、そして魅力的な編集をもって、アジアのメディア界のトップランナーであることを明確に示しています。ウェブ上では、SOPA賞に関する英文記事が公開されており、その内容を確認することができますが、この快挙は、今後のアジア報道の基準を一段と引き上げる出来事となるでしょう。
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