【2019年最新】水害リスクを「直視せよ」!江戸川区の“衝撃的な”ハザードマップが突きつける自治体・住民の課題

2019年(令和元年)6月、列島は本格的な梅雨の季節を迎えました。今年の梅雨入りは西日本で遅れがちで、特に福岡県内の主要なダム貯水率は6月13日の時点で平年の83%を大きく下回る45%にまで低下し、福岡県が異例の節水を呼びかける事態となっています。一方で、東日本では平年並みか、降水量がやや多い傾向にあり、梅雨明けも例年より遅くなる見込みです。このような気象状況の中、近年、毎年のように梅雨の終わり頃に発生し、甚大な被害をもたらす集中豪雨への備えを、私たちは改めて心に留めておく必要があるでしょう。

こうした水害リスクの高まりを受け、東京都江戸川区が作成し公表した水害ハザードマップが大きな話題を呼んでいます。このマップは、想定される最大級の台風や大雨が襲来した場合、「江戸川区のほとんどが水没する」という極めて厳しい被害予測を明示しているのです。さらに、住民に対し「区内に居続けることはできません」「ここにいてはダメです」と強い言葉で警告し、浸水が始まる3日前からの区外への広域避難を要請しています。これは、従来のハザードマップが持つ「危険区域の周知」という役割を超え、具体的な行動を強く促す「ショック療法」的なアプローチだと言えます。

区が開催した住民説明会では、当然ながら多くの戸惑いの声や質問が相次いだようです。最大の懸念事項の一つは、避難先がないという点です。江戸川区民だけで約70万人という膨大な数の避難者が見込まれる中、現状では住民が自己責任で宿泊先を探すことになります。区は災害支援協定を結んでいる茨城県や千葉県の自治体と、これから受け入れ体制について協議を始める段階であり、国や東京都も支援策を検討していますが、具体的な「あて」がないことに住民の不安は募ります。SNSでも「3日前から避難しろって言われても現実的じゃない」「ホテル代はどうするの?」「ペットはどうすればいいのか」など、生活に直結する懸念の声が数多く見受けられました。

もう一つの切実な問題は、「学校や会社が休みにならないと3日前からの避難は不可能」という現実的な壁です。区はこの問題に対処するため、学校や企業に対して早期に休業や休校の判断をするよう、今後働きかけていく意向を示しています。現時点で具体的な方策はまだこれからですが、区の職員による説明は非常に丁寧で、水害リスクという厳しい現実を住民と共有しようという姿勢が評価され、住民からは一定の理解を得られている印象を受けました。リスクを直視し、まず共有することが、対策の第一歩となるでしょう。

リスク・コミュニケーションの重要性と、自治体に求められる具体策

水害ハザードマップによる警告は、住民の不安を煽るだけでは、かえって避難行動を妨げるリスク・コミュニケーションの失敗に繋がります。リスク・コミュニケーションとは、行政や専門家と住民との間でリスクに関する情報を共有し、相互理解を深めるプロセスを指す専門用語です。単に「危ない」と伝えるだけでなく、不安を乗り越えて「これなら避難できそうだ」と思えるような、具体的な支援策や行動計画を同時に提示することが不可欠となります。実際の説明会でも、区内に留まりたいという意見が出るなど、住民感情との向き合い方が極めて重要であることが示されました。

私見ですが、今回の江戸川区の取り組みは、日本全国の自治体が抱える広域避難という究極の課題に対し、果敢に挑戦した先駆的な事例だと評価できます。自治体には、住民との対話(やりとり)を根気強く重ね、避難先の確保や企業・学校との連携といった具体的な枠組みを早期に構築することが求められます。このような「ショック療法」的なマップの公表効果を最大化するためには、自治体が単なる警告者ではなく、安心できる具体的な避難を可能にする「伴走者」となることが、最も重要であると考えます。今回の事例は、全ての低平地(ていへいち)自治体、つまり海面や河川水位よりも土地が低い地域に存在する自治体にとって、極めて重い教訓を投げかけていると言えるでしょう。

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