埼玉県が2019年9月28日までにまとめた、2018年度(平成30年度)の県内全63市町村における普通会計決算の速報値が発表されました。今回の報告で最も注目すべき点は、これまで右肩上がりを続けてきた歳出(自治体が使うお金)が、前年度比0.3%減の2兆4288億円となり、実に12年ぶりに減少へ転じたことです。SNS上では「ようやく支出が抑えられたのか」と安堵する声がある一方で、「必要な予算が削られているのではないか」といった不安の声も入り混じり、大きな反響を呼んでいます。
歳出が減少した最大の要因は、公共施設や道路の整備といった「普通建設事業費」が11%も大幅に減ったことにあります。特に川口市において2017年度に行われた市立高校の再編統合や、火葬場の整備といった大規模なインフラ投資が一区切りついたことが、県全体の数字を押し下げる結果となりました。しかし、県市町村課が「歳出規模は依然として高い水準にある」と警鐘を鳴らしている通り、今回の減少はあくまで一時的な大型工事の反動によるものであり、楽観視できる状況ではなさそうです。
社会保障費の増大と「財政の硬直化」が招くリスク
支出の内訳を詳しく見ていくと、子ども・子育て支援新制度に伴う給付金などの「扶助費(ふじょひ)」は1.2%増加しています。扶助費とは、生活困窮者への支援や児童手当、医療費の助成など、社会福祉のために支出されるお金のことです。少子高齢化が進む現代において、この分野の予算膨張は避けられない課題と言えるでしょう。編集者としての視点で見れば、ハコモノ行政が落ち着いた一方で、人々の暮らしに直結するコストが着実に増え続けている現実に、自治体経営の難しさが表れていると感じます。
さらに深刻なのは、自治体の「家計のゆとり」を示す「経常収支比率(けいじょうしゅうしひりつ)」が過去最悪の93.9%に達したことです。これは、市町村税などの自由にお金を使える収入のうち、人件費や借金の返済といった「毎年決まって出ていく固定費」が占める割合を指します。この比率が高いほど、新しい政策や災害対応に回せる予算が少ない「硬直した状態」であることを意味します。90%を超えると財政の弾力性が失われていると判断されるため、埼玉県の市町村は非常に厳しい舵取りを迫られています。
一方で、2018年度の歳入(自治体の収入)に目を向けると、市町村税が3.3%増加するという明るい兆しも見られました。景気の波を反映して個人や法人の住民税、そして固定資産税が伸びたことは、地域経済が一定の活力を保っている証拠といえます。しかし、国から配分される地方交付税が4.2%減少したため、歳入全体では2兆5334億円と2年ぶりのマイナスを記録しました。自前の財源が増えても、国からのサポートが減るという構図は、地方自治体にとっての自立の厳しさを物語っています。
今回の決算報告は、一見すると「支出が減った」というポジティブなニュースに見えますが、その内実は社会保障費の負担増と自由な予算の欠如という構造的な問題を抱えています。私たちは単に数字の増減に一喜一憂するのではなく、自分たちが住む街の税金が、将来への投資と現在の福祉のバランスをどう取っているのかを注視していく必要があります。自治体が柔軟性を欠いた「余裕のない経営」に陥らないよう、行政の効率化や持続可能なまちづくりへの議論が、今まさに求められているのではないでしょうか。
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