世界中で海洋プラスチックごみ問題への危機感が高まる中、日本の化学メーカー各社が環境負荷を劇的に低減する革新的な素材開発で火花を散らしています。2019年9月30日現在、土壌や海水中の微生物によって分解される「生分解性プラスチック」の分野では、カネカや三菱ケミカルといった国内大手が世界市場をリードすべく、技術革新と設備投資を加速させている状況です。SNS上でも「ストローが紙に変わるだけでなく、素材そのものが進化するのは嬉しい」といった、企業の環境姿勢を支持する声が目立っています。
こうした素材は、自然界に存在するバクテリアなどの働きによって最終的に水と二酸化炭素にまで分解される性質を持っており、従来のプラスチックが数百年単位で残留する問題を解決する切り札と期待されています。特にカネカは、2019年9月に化学業界として国内初となる「環境債(グリーンボンド)」の発行を決定しました。これは環境改善効果がある事業に限定して資金を募る債券で、5年債で総額50億円の調達を予定しています。この資金は、まさに地球を救う次世代素材の研究や増産に投じられるのです。
驚異の「100倍増産」へ!カネカが描く100%植物由来の未来図
カネカの戦略は非常にダイナミックです。同社は2018年に生産能力を従来の5倍にあたる年産5,000トンへ引き上げる投資を断行し、その新工場がいよいよ2019年12月に稼働を迎えます。しかし、これはあくまで序章に過ぎません。田中稔副社長は2019年5月の記者会見にて、2020年には年産2万トン規模の工場を新設し、将来的には現在の100倍となる年産10万トン体制を目指すという壮大なビジョンを掲げました。この強気の姿勢こそが、日本企業の国際競争力を支える源泉になると私は確信しています。
同社の製品が秀逸な点は、100%植物由来でありながら海水中でしっかりと分解されることが証明されている点にあります。この「海水での生分解性」は非常にハードルが高く、欧州の専門機関からもその品質は高く評価されています。すでにセブン&アイ・ホールディングスが一部店舗でストローとして試験導入を開始したほか、資生堂との化粧品容器の共同開発も進んでいます。単なる「エコ」を越えた、高機能なブランド素材としての地位を確立しつつあると言えるでしょう。
ファッションからホテルまで!三菱ケミカル「バイオPBS」の快進撃
一方、三菱ケミカルも「バイオPBS」という強力な武器で用途拡大を急いでいます。これはトウモロコシなどを原料とした「コハク酸」と、ポリエステル樹脂の元になる物質を組み合わせて作られる化合物です。元々は農業用の土壌被覆シートとして開発されましたが、その優れた加工性が認められ、今や欧米ではコーヒーカプセルの包装材やレジ袋へと採用が広がっています。企業の社会的責任(CSR)が問われる現代において、この素材への転換はブランド価値を高める重要な戦略となっています。
2019年8月には、日本を代表するファッションブランド「コム・デ・ギャルソン」が、世界19カ所の直営店で使うショッピングバッグにこの素材を採用するという画期的なニュースが飛び込んできました。さらに、京浜急行電鉄系のホテルやワシントンホテルでもストローとしての採用が決定しています。私たちが日常的に触れる場所で、次々と「三菱ケミカルの技術」が地球を守る盾となっているのです。こうした生活に密着した形での普及は、消費者の意識改革にも大きく寄与することでしょう。
コストの壁を打ち破る三井化学の挑戦と製紙業界の逆襲
三井化学が狙うのは、より身近な「ポリプロピレン(PP)」のバイオ化です。PPは自動車部品や家電に多用され、国内生産の2割を占める極めて一般的なプラスチックですが、三井化学は非可食植物である「ソルゴー」を活用した独自の製造法を開発しました。2019年内には千葉県茂原市に研究設備を導入し、量産化に向けた実証試験を開始します。特筆すべきは、これまで課題だった「価格の高さ」を克服し、比較的安価な提供を目指している点です。2030年には国内需要の4%を担う10万トン体制を目指しており、期待が高まります。
化学メーカーの動きに呼応するように、製紙業界も「脱プラ」の波をチャンスと捉えています。王子ホールディングスは、紙でありながら酸素や水蒸気を通しにくい高機能な包装材を開発し、2019年度中の事業化を予定しています。日本製紙や三菱製紙も追随しており、食品包装の分野で「プラから紙へ」という大きなパラダイムシフトが起ころうとしています。海洋に漂うマイクロプラスチックが魚を通じて人間の食卓に戻ってくるという絶望的な予測を覆すには、今こそこうした日本企業の技術を結集させるべき時なのです。
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