日本の科学技術分野における国際的な存在感の低下が叫ばれて久しい昨今、この閉塞感を打破すべく文部科学省の若手職員たちが立ち上がりました。2019年09月03日、彼らは「官民協働による新たな科学技術政策について」と題した、これまでの常識を覆す画期的な提言を公表したのです。このプロジェクトには、部署の垣根を越えた課長補佐や係長級の若手約30名が参加しており、自らの組織が抱える限界を率直に認めることから議論をスタートさせています。
今回の提言において特筆すべきは、政府主導の施策には限界があるという「官の敗北宣言」とも取れる潔い姿勢でしょう。プロジェクトの旗振り役を務めた大臣官房政策課の迫田健吉室長補佐は、国の厳しい財政事情を背景に、予算の制約からくる従来手法の行き詰まりを指摘しています。SNS上では「お役所が自ら限界を認めるのは珍しい」「若手の柔軟な発想に期待したい」といった、驚きと好意が入り混じった反響が数多く寄せられ、大きな注目を集めました。
提言の大きな柱の一つが「研究支援サービス・パートナーシップ制度(仮称)」の創設です。これは、国立大学への運営費交付金が削減され、研究環境が疲弊している現状を、民間の革新的なサービスで補おうとする試みです。具体的には、クラウドファンディングで研究費を募る企業や、高価な研究機器をシェアリングする新興ベンチャーを文部科学省が正式に「認定」します。これにより、保守的な大学現場でも安心して民間サービスを導入できる土壌を整える狙いです。
稼ぐ研究者「テクノプレナー」が日本を変える!2020年度からの新展開
また、今回の提言では日本の学術界に根深く残る「論文至上主義」や「研究者は金儲けをすべきではない」という風潮にも鋭くメスを入れています。海外では研究成果をもとに起業することは一般的ですが、日本では依然として心理的なハードルが高いのが実情でしょう。そこで若手職員らは、研究者が民間のインキュベーション施設(起業支援施設)を活用し、投資家とのマッチングなどを通じて事業化を目指す「テクノプレナー」の育成を提唱しました。
テクノプレナーとは、テクノロジー(技術)とアントレプレナー(起業家)を組み合わせた造語で、自らの専門知識を社会実装し、収益を上げながら研究を加速させる次世代の研究者像を指します。文部科学省はこの新しいモデルを確立するため、2020年度の予算概算要求に関連費用を盛り込むなど、単なる理想論に留まらない実行力を見せています。研究者が経済的な自立を果たすことは、公的資金に過度に依存しない、強靭な研究基盤の構築に繋がるはずです。
編集者の視点から言えば、この提言は「護送船団方式」のような旧来の行政からの脱却を象徴する重要な一歩だと感じます。2018年春頃から研究者やベンチャー経営者と対話を重ねて練り上げられたこの案が、形骸化せずに教育・研究現場へ浸透することを切に願います。官が「お墨付き」を与えることで民間のスピード感を阻害する懸念もありますが、まずはこの勇気ある提言を支持し、日本の科学技術が再び世界をリードする未来を期待したいところです。
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