「まちづくり」という言葉を聞くと、どこか遠い存在に感じるかもしれません。しかし、筑波大学の川島宏一教授は、地域が抱える課題を住民一人ひとりが「自分ごと」として捉えることこそが、真のまちづくりだと提唱しています。そこで重要な役割を果たすのが、行政などが保有する公共データの共有です。これらは、散らばっている地域の資源を結びつけ、課題解決を加速させる強力な触媒となります。
例えば、2019年10月02日現在、救急車の現場到着時間は全国平均で約8.6分を要しています。一方で、心肺停止状態に陥った人の生存率は、約10分が経過するとゼロに近づくという厳しい現実があります。目の前で誰かが倒れたとき、通りすがりの人が最寄りのAED(自動体外式除細動器)の場所を把握しているケースは稀でしょう。1分1秒を争う局面では、従来の救急体制だけでは限界があるのです。
AEDとは、心臓がけいれんし血液を流すポンプ機能が失われた状態に対し、電気ショックを与えて正常なリズムを取り戻させる医療機器を指します。茨城県つくば市では、119番通報で得られた位置データを活用し、現場近くにあるAEDを迅速に搬送する画期的な仕組みづくりが進められています。SNS上でも「データの使い道として最も価値がある」「テクノロジーで救える命が増えるのは素晴らしい」といった、期待に満ちた声が数多く寄せられています。
災害から高齢者を守る!防災士と位置情報の連携
昨今、激甚化する自然災害による洪水被害が各地で相次いでいます。犠牲者の多くを占めているのは、自力での避難が困難な一人暮らしの高齢者といった「避難行動要支援者」の方々です。自治体はこうした方々の名簿を保有していますが、その情報をいかにして現場の救助活動に繋げるかが大きな課題となっていました。ここで期待されているのが、全国に約18万人存在する防災士とのデータ連携です。
防災士とは、社会の様々な場所で減災や防災に関する知識と技能を活かして活動する、民間資格を持ったリーダーたちを指します。もし自治体が把握する要支援者の位置情報を、プライバシーに配慮した上で適切に防災士と共有できれば、迅速な避難支援が可能になるでしょう。これまで救えなかった命を救うための「情報の橋渡し」が、今まさに求められているのです。
私は、公共データとは単なる数字の羅列ではなく、人々の善意を正しい方向へ導く「地図」であると考えています。個人情報の保護という高い壁はありますが、緊急時において「誰が助けを必要とし、誰が助けられるのか」をマッチングさせることは、現代社会における究極の相互扶助ではないでしょうか。データの適切な利活用が、私たちの街をより優しく、強いものへと変えていくに違いありません。
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