2019年10月01日、ついに消費税率が10%へと引き上げられました。私たちの暮らしに直結するこの増税ですが、法政大学の小黒一正教授は、これだけで日本の財政が安泰になるわけではないと警鐘を鳴らしています。1989年04月01日に3%で導入されてから30年をかけてようやく7ポイント上昇した日本に対し、欧州諸国では20%を超える国も珍しくありません。現在の100兆円規模に膨らんだ国家予算と比較すると、税負担のバランスが著しく欠如しているのが実情でしょう。
社会保障給付費は、2040年度には約190兆円にまで達すると試算されており、これは2018年度と比較して約6割も増加する計算になります。この膨大なコストを支え続けるためには、感情論ではなく「エビデンス(科学的根拠)」に基づいた冷徹な改革が避けられません。特に公的医療保険がカバーする医薬品の範囲については、優先順位が極めて不透明であると小黒教授は指摘します。財政の持続性を守るのか、それとも足元の国民ニーズを優先するのか、その立ち位置を明確にする時期が来ているのです。
SNS上では「増税はやむを得ないが、使い道を透明にしてほしい」といった声や、「現役世代の負担が限界に近い」という切実な意見が散見されます。こうした国民の不安に応えるには、高所得者も一律に恩恵を受ける現在の仕組みから、低所得層への「再分配(富を偏りなく分かち合うこと)」に重点を置いた税投入へとシフトすべきではないでしょうか。基礎年金の約半分が国庫負担で賄われている現状を鑑みると、限られた財源をどこに集中させるべきかは自明の理だと言わざるを得ません。
司令塔の復活とデータ一元化が握る日本の未来
改革を阻む大きな壁となっているのが、政府内でのデータ管理の縦割り構造です。投薬内容や治療結果を分析するための情報が一元化されていないため、効率的な政策立案が困難になっています。2019年09月に「全世代型社会保障検討会議」が発足しましたが、これはわずか1年間の限定的な組織に過ぎません。小黒教授は、かつてGHQの指導で設立され、2001年の省庁再編で消滅した「社会保障制度審議会」のような、強力な権限を持つ常設の司令塔が必要だと訴えています。
また、内閣府が示す財政試算の「甘さ」についても、厳しい目を向ける必要があります。2028年度の財政赤字を対GDP比で2.3%程度と見込む試算では、今後の経済成長率を約1%前後と想定していますが、1995年度以降の実績はこれを大きく下回っています。私個人の見解としても、楽観的な数字に依存した計画は、将来世代への無責任なツケ回しに繋がりかねないと危惧しています。日本にも、政府の試算を独立した立場で厳格に検証する「公的な第三者機関」の設置が急務でしょう。
今の日本に必要なのは、痛みを伴う改革から目を背けず、社会保障のあり方を根底から作り直す覚悟です。2019年という転換点において、私たちは単なる「増税への不満」に留まるのではなく、その先にある持続可能な社会のグランドデザインを議論すべき時にあります。小黒教授が提言するように、データの活用と強力な統治機構の再建こそが、沈みゆく財政という泥舟を救い出す唯一の道となるはずです。次世代に誇れる日本を残すため、今こそ賢明な選択が求められています。
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