アメリカの金融システムが、今まさに歴史的な転換点を迎えています。米連邦準備理事会(FRB)は、2019年8月に24時間365日いつでも即座に送金が完了する新決済システム「FedNow(フェドナウ)」の構築を発表しました。これまで平日の稼働に限られていた中央銀行のシステムが、土日祝日を問わずリアルタイムで動くようになるのです。この動きは、デジタル時代の利便性を求める消費者にとって、待望のイノベーションと言えるでしょう。
そもそも「即時決済」とは、銀行口座間での送金が数秒から数分で完了する仕組みを指します。現在のシステムでは、金曜日の夜に送金しても着金が週明けになるなど、タイムラグが発生することが珍しくありません。この課題を解決すべく、FRBは2023年から2024年の稼働を目指して準備を進めています。SNS上では「ようやくアメリカも現代に追いつくのか」「給与が即日反映されるなら助かる」といった、期待に満ちた声が数多く寄せられています。
しかし、この公的な動きに対して複雑な胸中を明かしているのが民間の金融エリートたちです。実は、JPモルガン・チェースをはじめとする大手銀行連合「ザ・クリアリング・ハウス(TCH)」は、2017年11月より独自の即時決済システム「RTP」を既に運用しています。彼らにとって、FRBの参入は「民間の努力で育てた市場への後出しジャンケン」のようにも映っており、官民の間で激しい主導権争いの火花が散っている状況なのです。
巨大IT企業「リブラ」への牽制と地域金融機関の守護者
FRBが新システムを急ぐ背景には、大手金融機関だけでなく、テック巨人の影もちらついています。2019年6月に発表された、フェイスブック主導のデジタル通貨「リブラ」がその代表例です。FRBで金融規制を担当するブレイナード理事は同年8月、自国通貨を避けるような民間決済システムに警鐘を鳴らしました。全米1万以上の金融機関との取引実績を持つFRBこそが、公平で安全な決済インフラを提供すべきだ、と強く主張しているのです。
一方で、全米各地に点在する小規模な地域金融機関からは、FRBの参入を歓迎する声が上がっています。大手銀行のみが運営するシステムでは、将来的に手数料の高騰や不当な差別が発生しかねないと危惧されているためです。こうした中小銀行にとって、中央銀行が提供する「FedNow」は、一部の巨大銀行による独占を防ぐ救世主として期待されています。消費者の利益を最優先する公平な競争環境の維持が、FRBの真の狙いと言えるでしょう。
私の視点では、この官民の対立は一時的な摩擦であり、最終的には米国の金融競争力を底上げする健全なプロセスだと考えます。中央銀行という信頼の礎が築く「FedNow」と、民間の創意工夫が詰まった「RTP」や「リブラ」が競い合うことで、手数料の低下やサービスの向上が進むはずです。2019年10月2日現在の状況を俯瞰すると、デジタル決済がもたらす新しい経済の幕開けは、すぐそこまで迫っていると確信しています。
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